トランプはなぜ支持者を洗脳できたのか?その分断と煽りの手口、米国民の4割は今も現実歪曲空間にいる

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トランプ氏がアメリカにもたらした深刻な「分断」は、新政権の対中政策までをも困難なものにするようです。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、著者で「Windows 95を設計した日本人」として知られ、新世代プレゼンツール『mmhmm(ンーフー)』の開発にも参加している世界的エンジニアの中島聡さんが、トランプ氏が取り続けてきた「分断の手口」を改めて詳細に振り返るとともに、米国人の実に4割が、トランプ大統領が作り出した「現実歪曲空間」の中にいまだにすっぽりと包み込まれていると指摘。その上で、分断の続くアメリカが一枚岩である中国と対峙するのは容易ではないとの見解を示しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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トランプ氏の現実歪曲空間

これまで、私はスティーブ・ジョブズの現実歪曲空間と呼ばれる力についてなんどか触れてきましたが、今回はドナルド・トランプ氏もそれと似たような力を持っているという話です。

スティーブ・ジョブズはたぐい稀なプレゼン力・説得力を持ち、その力を最大限に利用して優秀な人物を集め、協力者を集め、投資家から資金を集め、Appleを成功に導きました。彼が話すと不可能なことが可能に思えてしまい、それを信じて彼に協力する人がいるからこそ、それが可能になる、ということが何度も起こったのです。

私は、こんな力こそ起業家には必須だと考えています。会社のビジョンを熱く語れるリーダーがいてこそ、優秀な人が集まって必死になって働き、不可能を可能にしてしまうのです。

政治家にもそんな力を持った人がたまに現れます。日本で言えば、田中角栄が良い例です。

日本列島改造論という壮大なビジョンを掲げ、国を一つにまとめて、日本列島全体に高速道路や新幹線を張り巡らせるという大計画を進めることに成功しました。私も子供のころに彼のスピーチを聞いたことがありますが、力強く明確で、説得力に溢れるスピーチだったことを覚えています。

しかし、そんな力が悪用される場合もあります。典型的な例が、ドイツのアドルフ・ヒトラーです。

ヒトラーは、全世界を第二次世界大戦へと導き、ユダヤ人の大虐殺を引き起こした「極悪の独裁者」として知られていますが、彼を首相に選んだのはドイツ国民なのです。

ヒトラーは、第一次大戦後の不景気に困窮するドイツ国民の心を熱いスピーチで捉えて選挙に勝ち続けましたが、そこには綿密な計画があったことが、ヒトラー自身が著した『我が闘争』に書かれています。

彼は「大学教授に与える印象によってではなく、民衆に及ぼす効果によって演説の価値が量られる」と考えていたそうです。小難しいことを言うよりも、分かりやすく、人を熱くする言葉を繰り返す方が、はるかに効果があるのです。

ドナルド・トランプ氏のスピーチは、ヒトラーのスピーチに通じるところがたくさんあります。

「メキシコとの間に壁を作る」「移民を排除する」「中国は泥棒だ」「地球温暖化は嘘だ」「石炭の採掘を再開する」と行ったり、新型コロナウィルスのことを「チャイナ・ウィルス」と呼んだりという発言です。

これらの発言は、ある程度教養のある人たちにとっては「短絡的で稚拙ででたらめな」発言でしかありませんが、一部の人々にとっては、スティーブ・ジョブズの現実歪曲空間以上の影響力を持つのです。

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