海保のボロボロ船艇で、どうやって尖閣を防衛するつもりなのか?

2021.03.28
by MAG2 NEWS編集部 u
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「海警法」を施行し尖閣諸島周辺での動きを活発化させる中国。その動きへの対応にあたる海上保安庁の巡視船が老朽化により、一時航行不能状態に陥っていたと産経新聞が独自記事で伝えました。この報道に対し、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんは驚き、呆れながらも解決できる問題もあると指摘。以前にも主張している、海上自衛隊と海上保安庁のインターオペラビリティ(共用性、相互運用性)を可能な限り高める必要があると訴えています。

離島防衛なんて、よく言うよ!

3月22日の産経新聞にこんな大見出しが踊りました。

尖閣巡視船、一時航行できず 昭和55年建造…老朽化で故障か

尖閣と聞くとじっとしている訳にはいきません。まずは記事から。

「尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で領海警備に当たっていた海上保安庁の尖閣専従巡視船が1月、任務中に故障し、一時、航行不能状態に陥っていたことが21日、海保関係者への取材で分かった。老朽化が原因とみられる。尖閣では中国海警局の船による領海侵入が相次ぎ、中国は2月、海警局の武器使用を認める海警法を施行するなど日本の有効支配を覆す動きを強めており、装備の刷新も含めた対策が急務といえそうだ。

 

 尖閣周辺の領海警備で、任務中の巡視船が航行できなくなる事態は極めて異例。故障が発生したのは那覇海上保安部所属のヘリコプター搭載型巡視船『うるま』で、老朽化が進んでいる」(中略)

 

「うるまは1月下旬、尖閣諸島周辺で、船内の電力をまかなう発電機の一部が故障し、動作不良になった。発電機を動かしている燃料タンクを確認したところ、大量の海水が混入していることが判明。海水を含んだ燃料をエンジンに使用すれば機関停止につながる恐れもあり、一定時間、エンジンを停止させたままの状態を余儀なくされた」(中略)

 

「耐用年数を過ぎた139隻の内訳は巡視船29隻、巡視艇110隻。巡視艇の老朽化が特に顕著で、超過割合は46%に上る。海保は順次、新造して代替更新を進めているが、尖閣対応巡視船の増強などが優先されてきたため、追い付いていないのが現状だ」(中略)

海保の悩みが深いことがわかりますが、気になったのは次の部分です。

「(前略)耐用年数を過ぎた巡視船艇は故障が増え、エンジンの出力が落ちて速度が低下。さびなどの腐食で船体に穴が開いて修理が必要になるほか、交換部品が製造中止になっているケースもある。海保は対応が手薄にならないよう、古い船艇が1カ所に集中しないようにするなど配置を工夫し、老朽化に対応している」

日本は領海と排他的経済水域を合わせた面積で世界6番目の海洋国家です。その海洋権益を海上保安庁と海上自衛隊で守っています。すぐれた企業経営者に若干の基礎知識を備えてもらえば、返ってくる答えはほぼ同じでしょう。

予算としては防衛省と国土交通省で分かれますし、その中でも海上自衛隊と海上保安庁という組織別に考えなければならないのは当然です。しかし、そこに日本の海洋戦略という視点をかぶせると様々な意味で合理化が実現できるのではないかと思います。

護衛艦と巡視船を共通化しろなどというつもりはありません。ただ、両方の艦船で共通化できる部品類は少なくないと思います。それをできなければ企業は成り立ちません。

また、家庭で使う電化製品ではありませんから、早く買い換えさせる目的で部品をストックしないということがあってはならないのが国家の装備品です。最後は「共食い」で部品を融通するにしても、退役するまで部品を確保するのは国家国民に対する責務でもあります。

部品がないなどというのは国家としての怠慢ですし、責任放棄です。政治家の皆さん、海洋国家とか離島防衛とか口にして、恥ずかしいですよね(笑)。(小川和久)

image by:viper-zero / Shutterstock.com

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