企業中心社会の崩壊が始まった。「学歴が高いだけ正社員」が追い出される日

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コロナ禍によって今、日本社会の構造が大きく変わろうとしています。リモートワークの普及によって会社への帰属意識が薄まり、反対に在宅の時間が増えることで地域との関係が深くなりました。メルマガ『j-fashion journal』著者で、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、コロナは一つの大きな社会実験だとした上で、もう「コロナ前」に戻ることのない日本で働くこと、生活していくことの意味が大きく変わり始めた時代を生き抜くために私たちが持つべき心構えを説いています。

壮大なコロナ実験で何が変わる?

1.テレワーク、リモート学習の実験

会社はテレワークになり、学校はリモート学習になる。リアルな対面がなくなり、仕事や学習は個人で行うのが原則となる。

昔、会社は利潤を追求する機関と言われた。現在、会社は社会の一員であり、少なくとも利己的な利潤追求が褒められることはない。

むしろ、事業で得た利益をどのように使うが問われている。利潤は株主に還元するだけでなく、何らかの社会貢献が求められている。会社の社会的貢献の一つに、社会の構成単位としての機能があると思う。

昔は家が社会の構成単位であり、家の上に地域社会があった。しかし、会社勤めが増えて、成人の男女は会社に通う人が増えた。地域には年寄りと子供が残され、地域社会は崩壊していった。

その代わりに、会社社会が構成された。会社は社会の構成単位となったのだ。

テレワークはこの枠組みを壊した。会社に通っていた成人男女は家に戻り、学生もリモートワークで家に戻った。こうなると、社会の構成単位は会社から家へと移行していく。

会社の社縁は弱まり、地域の地縁が強まる。そして、家族の絆も強まるだろう。

高齢者が仕切っていた地域社会に現役世代が戻ると、新たな地域コミュニティが生れるだろう。そして、地域行政、地域政治への関心も高まっていく。当然、行政のあり方も変わるし、大都市と衛星都市の関係も変わるはずだ。

交通インフラのあり方、盛り場の立地も変化せざるをえない。日本は都市の空洞化が始まり、地域の活性化が始まっていく。今はその過渡期だ。

2.会社の弱体化、学校機能の解体

会社は社会を構成する要素ではなく、単に個人が収入を得るための装置になっていくだろう。会社への帰属意識が薄れれば、転職が増え、労働力の流動化が始まる。

同時に、コロナ禍による経済恐慌が始まり、企業倒産が増え、失業者が増加するだろう。そうなれば、自ら望まなくとも会社の帰属意識は消えていく。

この二つの流れが相まって、会社は弱体化していくに違いない。そうなると、学校のあり方も代わってくる。会社社会のための人材育成から、地域社会のための人材育成に変化していく。

また、リモートワークが普及すれば、学校も単なる知識を得るための装置となる。

会社社会の崩壊は、学歴の意義も変わっていく。肩書だけの学歴よりも、実践力が求められる。例えば、社内政治に熱心で実務ができない正社員より、事務処理能力の高い派遣社員の方が必要な人材であると認識されるかもしれない。そうなると、学歴とは何だろう、ということになる。

実践的な能力を身につけるためなら、現在の大学や専門学校は授業料が高すぎる。リモート学習主体ならば、キャンパスも校舎も必要ない。ネット中心の大学が認められれば、授業料は劇的に下がるだろう。そうなれば、所得が低い家庭の子供も高等教育が受けられる。

そうなると、会社に依存しなくても、個人が地域社会の中で起業するケースが増えるだろう。

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