世界的エンジニアが解説、今後もコロナウイルスが「収束」しない訳

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国民の55%が2回目の新型コロナワクチン接種を完了し、一度はマスク着用義務が解除されたものの、変異株の感染拡大で再び屋内でのマスク着用が義務化されたイスラエル。これから先も、このような人類とコロナウイルスの「いたちごっこ」は繰り返されるのでしょうか。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では「Windows95を設計した日本人」として知られる米シアトル在住の世界的エンジニア・中島聡さんが、ウイルスが世代ごとに感染力を増すシステムと、イギリスやインドといった爆発的感染拡大が起こった地域で、より感染力の強い変異株が生まれる理由を解説。さらに、今後の人類とコロナウイルスを巡る「新しいライフスタイル」の予測を記しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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私の目に止まった記事:インドで発見の変異株をデルタ株と呼ぶようになった訳をWHOが解説

Tracking SARS-CoV-2 variants

最近になってイギリスで発見された変異株のことをアルファ株、インドで発見された変異株のことをデルタ株と呼ぶようになりましたが、それに関するWHOによる分かりやすい解説です。

専門家たちは、さまざまな変異株をB.1.1.7、B.1.617.2などと呼んで区別しています。これはPango lineageと呼ばれる遺伝子配列をベースにした系列(人間で言えば家系のようなもの)で、厳密な分類が必要な専門家にとっては便利ですが、一般の会話で使うにはとても不便です。

だからと言って「イギリス株」「インド株」などの呼び方は、不正確な上に誤解や風評被害を招きかねないので(デルタ株を「インド株」と呼んでいた時期に、日本では、インド料理店の売り上げが下がったそうです)、アルファ・ベータ・ガンマとギリシャ文字を当てはめた「一般名称」とすることに決めたそうです。

変異株は流行しなかったものも含めれば無数にあるため(新型コロナは、激しく突然変異をしています)、憂慮すべき変異株(VOC:Variants of Concern)と注目に値する変異株(VOI:Variants of Interest)だけにギリシャ文字を当てはめています。

現時点では、VOCに指定されているのは、

  • アルファ、B.1.1.7、英国
  • ベータ、B.1.351、南アフリカ
  • ガンマ、P.1、ブラジル
  • デルタ、B.1.617.2、インド

の4種類で、VOIとして指定されているのは、イプシロンからラムダまで、7種類あります。カッパと名付けられたインドで発見された変異株は、B.1.617.1で、デルタ株と(下一桁しか違わない)兄弟であることが分かります。

ちなみに、最近、デルタ株がさらに変化したデルタプラス株と呼ばれる変異株がインドで発見されて注目を集めていますが(「Delta plus: Scientists say too early to tell risk of Covid-19 variant」)、WHOによってVOIには指定されましたが、VOCにはまだ指定されていないそうです。

新型コロナウィルスは、ある一定の確率で突然変異を起こしますが、自然淘汰により、「より感染力が強いもの」だけが残るため、世代ごとに感染力が強くなるのは当然の結果なのです(感染力が弱いものは消えてしまいます)。つまり、種族としては感染力の強い方向へと進化をしているのです。その進化のスピードは、数に比例するので、イギリスやインドのように爆発的な感染が起こった地域で、より感染力の強い変異株が生まれるのは当然なのです。

米国では、ワクチンの接種が進んだことにより、感染のスピードを大きく抑えることに成功しましたが、次のステップとして十分な可能性があるのが、現行のワクチンが効かない変異株の誕生です。毎日のように世界中でさまざまな変異株が誕生しているので、そのうちの1つでも、現行のワクチンが効かない突然変異を起こせば、それが瞬く間に世界中に広まることになります。

幸いなことに、変異株の遺伝子配列さえ分かれば、その変異株に効くmRNAワクチンを作ることは容易に出来るので、そんな変異株が流行し始めれば、すぐにModernaとBioNTechが新たなワクチンを作ってくれるだろうと思います。

そう考えると、COVID-19は「収束」することはなく、変異を繰り返しながら時々パンデミックを起こし、その度に、対応するmRNAワクチンを作って接種するというライフスタイルが普通のものになるのだと予想できます。

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