日本が報じぬ五輪「途中棄権」の真相。米女子体操界の体罰・暴力・性的虐待

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7月27日の体操女子団体の決勝を「心の健康」を理由に途中棄権するも、8月3日に行われた種目別平均台決勝に出場し素晴らしい演技を見せたアメリカ代表のシモーネ・バイルズ選手。しかし彼女が負っていた心の病の根は、考えられないほどに深いものでした。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、彼女も被害者の一人となっていた米国女子体操界の許しがたい事件のあらましを記すとともに、全てのスポーツで選手の「精神的健康」重視の体制を整える必要性を強調。さらに「呪われた」とさえ言われる東京五輪における「大きな成果」を紹介しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年8月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

日本のメディアはあまり書かない、世界が注目した米国体操「シモーネ・バイルズ途中棄権」事件

米紙「ニューヨーク・タイムズ」(NYT)7月31日付のスペンサー・ボカト・リンデルによる論説「五輪は修復不能なまでに壊れているのか?」はこう書いている。「日本ではこの五輪は『呪われた』と言われてきて、それはコロナ禍の感染大爆発の中で国民の多くが歓迎しないのに無理やり開催されていることを指しているが、呪われているのはそれだけでない」と。彼は、五輪の金権腐敗、商業化、テレビ最優先、選手軽視、女性蔑視などの積年の悪弊を挙げ、とりわけ今回の米体操チームの花形=シモーネ・バイルズが途中棄権した事件を、その観点から論じている。

心と体がバラバラになる危険な状態

シモーネは、よく知られているように、前回2016年リオ五輪の体操で4冠を達成し、また2013~19年の間に世界体操選手権で19個の金を含む計25個のメダルを獲得している、史上最高の選手(米国で偉大な選手を称えて言うGOAT=Greatest of All Time)である。それだけに、東京五輪でも大いに活躍することが期待されたが、27日の団体総合決勝で跳馬の演技を終えたところで、突然会場を去り、以後の試合を棄権した。

大勢のファンから「どうしたんだ?」と心配する声と共に、「途中放棄とは無責任だ」「弱さの表れ」といった非難の言葉も殺到した。それに対し彼女は、29日から自身のSNSで発信を再開、30日には自分が段違い平行棒の練習でミスをしている動画を公開し、「ここで見て分かるように、私は心と体が一致していないのです。皆さんはこのことが競技場の硬い床の上でどれほど危険であるか、分かっていない。体の健康は心の健康なのです」と述べた。さらにファンからの質問に答えて「twisties」という言葉を使ってこう説明した。

「時々、どうやって体をひねるのか分からなくなり、上と下の区別がつかなくなって、どこにどう着地するのかも分からなくなる。最もクレイジーな感覚。心身が同化していないと、体が石のように固くなる。これを解決するのに2週間以上かかることもある」と。

NYTはこの「トウィスティー」を「一時的な思考停止〔mental blockだが「心的障害」のほうが適訳か〕のために筋肉記憶や空中における空間意識を喪失すること」と説明し、「とりわけ彼女のように、他の選手がとても真似したがらない冒険的な技をひっさげて登場した選手の場合、これがどれほど危険なことであるかについて、体操界の認識は余りにも薄い」と指摘。そのため彼女は、5月のテニス全仏オープンで大坂なおみが「精神的健康」を理由に棄権したのに励まされて、今回の行動に踏み切ったのである。

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