予算案資料にミス続出。日本の官僚が当たり前の仕事もできなくなった理由

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先日掲載の「総務省の予算案資料に13カ所もミス発覚。『ネトフリで映画化されるぞ』『官僚に緊張感ない』と厳しい声」でもお伝えしたとおり、絶対的な正確さが求められる予算案資料に多数の誤りが指摘される事態が発生し、大きな話題となっています。かつては「優秀さの象徴」のように思われてきた日本の官僚たちに、何が起きているのでしょうか。今回のメルマガ『室伏謙一の「霞が関リークス」増刊号』では、著者で国会議員や地方議員の政策アドバイザーを務める室伏謙一さんが、近年の国家公務員の採用事情等を紹介しつつ、彼らの一部が「これまでなら当たり前の作業」すらできなくなってしまった原因と、そのような状況を招いた元凶を推測しています。

【関連】総務省の予算案資料に13カ所もミス発覚。「ネトフリで映画化されるぞ」「官僚に緊張感ない」と厳しい声

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令和4年度予算案関係資料の誤りの意味するもの

令和4年度予算の審議が始まっています。いわゆるスキャンダル追求のような質疑はなりを潜め、具体的な政策論、予算委員会ですから詳細な議論というより大きな方向性についての議論が中心ですが、そうしたものが展開されるようになってきています。

これまで、まあここ十数年だと思いますが、予算委員会と言えば野党の見せ場、世論にウケそうなネタで政権を追求している姿を見せる機会、そんなイメージが強かったと思います。予算委員会はテレビ入りで開催されるものと、テレビなしで開催されるものがありますが、スキャンダル追求、それも過剰な演出でのその手の質疑が行われてきたのは特に前者の方でした。

一方で、真に政策的議論をしたいと考えて予算委員会の審議に臨もうとしていた議員たちは、スキャンダルが世間を賑わしていようと、予算委員会という機会に質問すべき政策関連、政策の方向性に関する質問を準備していました。ところが、「世論ウケ」、「メディアウケ」を狙う、それを第一に考える議員が国会対策委員長だった時代には、冒頭に必ずスキャンダル追求質問を入れろと要求されて、やむなく政策関連の質問を減らしたり、場合によっては政策関連の質問を大幅に削られて、大半の時間をスキャンダル追求に充てさせられたりしていたのでした。

不本意な質疑を渋々やらされているのでは、審議の時間を空回ししているのと同じであり、貴重な審議時間、機会をドブに捨てていたようなものです。

それが、立憲民主が衆院選で議席を減らし、代表が枝野氏から泉氏に交替してから大きく変わりました。国対委員長もスキャンダル追求大好きな安住氏から、減税・積極財政派の馬渕氏に替わり、テレビ入りの審議でも政策議論ができるようになりました(そもそもそれが当たり前なのですが)。

さて、そうした中で発覚し、予算委員会で追求が行われたのが予算関連資料における誤り問題です。具体的には、総務省、法務省、文部科学省及び国土交通省の予算関連資料の中で、明細書において記載誤り、要は数字の誤りがあったというもので、多いものでは総務省の13箇所も誤りがあったとのこと。これまで全くこの手の誤りがなかったかと言えば、あったことはあったようですが、数件程度で、今回のように4つの省で、しかも多いところでは13箇所などということは前代未聞のようです。

明細に誤りがあっても、予算全体に影響しなければいいのではないか、との声もあるようですが、明細を間違えたまま執行することになれば、当然帳尻が合わなくなるわけであり、適正な執行ができなくなります。のみならず、このようなことを「今回は軽微だから」と有耶無耶にすれば、今後そうした有耶無耶が拡大していくことにもなりかねません。したがって、しっかりとケジメをつけておく必要があるわけであり、予算委員会で指摘の上、総理以下関係大臣が説明の上、陳謝したというプロセスは重要なのです。

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