生活保護費で競馬「327万円儲ける」も全額没収。70代男性、赤字理由に返還義務なし主張も裁判所は却下

2022.02.02
by tututu
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生活保護受給者の70代男性が競馬を的中させ、327万円余りの払い戻し金は行政側に返還すべきとの判決が出ていたことがわかった。産経新聞が報じた。生活保護制度では、競馬などで得た収入を届け出ると、その分が翌月の保護費の支給額から“差し引かれる”規定となっており、今後同様のケースが多く出てくる可能性がある。生活保護費のありかたについて大きな議論を呼びそうだ。

生活保護費で327万円儲けるも裁判所が徴収認める

保護費の返還を命じられたのは大阪府茨木市に住む70代男性。平成25年4月から令和元年7月までの約6年間、インターネット上で馬券を購入し、的中のたびに払い戻しを受けていたという。

ひそかに払い戻しを受けた額は327万円余りとかなりの高額。男性はJRA側から計101回の払い戻しがあったことが口座記録からわかっており、的中させた回数は多かったようだ。

これだけ金額をもらえば相当な儲けかと思いきや、馬券に投じた総額は約480万円に上り、トータルの収支は150万円ほどのマイナスで、大幅な赤字だとしている。

このことから男性は返還義務はないと訴訟で訴えたものの、大阪地裁は認めず、払戻金から的中馬券の購入代金を差し引いた全額を行政側に返還するよう命じた。

1回当たりの馬券購入代金を100円と推計した上で、的中馬券の購入代金を差し引いた326万4720円を徴収されるとみられる。払い戻し金は“全額没収”されることになる。

裁判では、「そもそも払戻金が馬券の購入代金を上回ることは極めてまれであり、男性側の主張を認めれば、生活保護受給者は収入を届け出ないまま、結果的に生活がさらに困窮する可能性が生じ、生活保護法の目的に反する」と判決理由が明かされた。

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パチンコならOK?悪質な生活保護費の使い方

なぜ今回、男性が競馬で多額の払戻金を受けたことが発覚したのか?

大阪・茨木市福祉事務所の担当者が男性宅を訪問した際に、室内から口座の通帳を発見。JRAから入金されていたことが記されており、その実態が明らかになった。

しかし、裏を返せば、口座の通帳が発見されていなければ一切わからなかった案件。男性が通帳をどこかに隠していれば、あるいは記録に残るようなギャンブルでなければ見過ごされていたことになる。

たまたま今回はインターネット上で競馬をしていたために出入金が記録されていたが、例えばこれが窓口での購入だったら発覚していなかったといえるかもしれない。

同様にパチンコなどで儲けていたとしてもその事実が明らかになることはない。

記事によると、平成28年度に公営ギャンブルやパチンコなどの遊戯で得た収入を届け出ず、保護費の不正受給と認定された件数は100件に上り、このうち競馬の事例は56件あったという。

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生活保護費の受給者がギャンブルなどで収入を得たとしても届け出が必要となり、その分は翌月の支給分から差し引かれることになる。すなわち、保護費を上回るほどの金額を手にしなければ“儲からない”のだ。

今回の判決は生活保護費でギャンブルに興じようとする人たちの抑止力になるのか。「馬券が的中しても払戻金は没収される」、このことは肝に銘じておいた方が良さそうだ。

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