プーチンは本当に侵略者なのか?米国こそがウクライナ紛争の責任を問われる理由

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いかなる理由があろうとも戦争は正当化されるものではありませんが、その責任の所在を巷間語られている言説だけで判断するのは短絡に過ぎないようです。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、欧米の知識人たちの言を引きつつ、冷戦終結後もNATO(北大西洋条約機構)が存在し続けた矛盾を指摘。その上で、もはや西側の盟主でもない米国による誤った世界との関わりが、ウクライナ紛争を引き起こした原因と考えられるとの見解を記しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年4月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

NATOはなぜ今もこの世に存在しているのか?

本シリーズの第3回(INSIDER No.1145)「歴史の物差しの当て方で視点が変わる」で、プーチンが少なくとも2014年9月のミンスク合意からの8年間を一連なりの政治プロセスと捉え、(この選択がよかったのかどうかは別にして)今それに彼なりの決着をつけようとしているのに対し、西側はせいぜい長くても昨年10月に軍事的緊張が高まり始めた頃からの短い物差しで事態を計測し、「突然」「一方的に」「侵略」と言い続けていて、そこがそもそも噛み合わないことを指摘した。

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冷戦後31年間も経ったのに

しかし本当のところロシア側が本質論的なレベルで問題にしている歴史の物差しはもっと長くて、1989年12月のマルタ島でのゴルバチョフ=ソ連共産党書記長とブッシュ父=米大統領との会談で冷戦の終結が宣言され、それに即して旧ソ連は率先、東側の軍事同盟である「ワルシャワ条約機構(WPO)」を91年7月に解体したにもかかわらず、米国を筆頭とする西側は今なお「北大西洋条約機構(NATO)」を解体していないばかりか、それを旧東欧から旧ソ連諸国にまで拡大し、すでにバルト3国を加盟させたのに続いてジョージアとウクライナも条件が整えば加盟を認めることを決定しているという、「冷戦後31年間」の物差しである。

これをロシアの側から見れば、冷戦が終わり東西両陣営が総力を挙げてぶつかり合うような大戦争は起こり得ないのだから、そのための戦争機構であるWPOを解体するのは理の当然で、米欧も同じようにすると思い込んでいた。ところがそうしないばかりか、どんどん東方に拡大し、ついにロシアと国境を接する国々までNATOに組み入れてきた。米欧にとってロシアは再び「敵」となり、NATOはそのロシアの喉元に突きつけられた剣となって皮膚に食い込み始めている。

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