今回のウクライナへの軍事侵攻が批判され、各国ではロシアへの経済制裁が続いています。しかし、当のプーチン大統領は「制裁は効いていない」とバッサリ。それが真実であるのかを語るのは、国際関係ジャーナリストで28年のロシア滞在歴を持つ北野幸伯さん。北野さんは自身のメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の中で、 ロシア経済の今後について分析しています。
プーチン「経済制裁は成功しなかった!」は本当か??
プーチンは6月17日、サンクトペテルブルグで開かれた「国際経済フォーラム」で演説しました。その中で、「西側による経済制裁は成功しなかった」といいました。
これ、皆さんもよく聞くのではないでしょうか?「制裁は、効いていないようだ」と。実際は、どうなのでしょうか?
制裁の影響は長期で見るべき
ロシアの知人、友人に、「制裁どう?」と聞いています。皆さん、「インフレだけだ」といいます。
ロシア連邦統計局の発表によると22年5月のインフレ率は、前年同月比で、17.1%だそうです。確かに「ひどいインフレ」ですが、「破滅的」とまではいえないでしょう。
しかし、経済制裁の影響は、長期で見る必要があります。
皆さん、もう忘れているでしょう。プーチンの1期目2期目、つまり2000年から08年まで、ロシアのGDPは、年平均7%成長していたのです。ロシア政府高官は強気で、07年08年には、「ルーブルを世界通貨にする!」と豪語していたものです。
ロシアは2014年3月、クリミアを併合しました。そして、その後、さっぱり成長しなくなりました。2014年から2020年のGDP成長率は、年平均0.38%。何が起こったのでしょうか?そう、欧米と日本が経済制裁を科したのです。
2014年3月当時、ロシア国民は、笑っていました。曰く、「ロシアは、世界有数の資源大国で、食糧を自給することもできる!核超大国で、侵略される恐れもない。制裁は効かない!!!!!!!!!!!」と。ところが、バリバリ効いていたのです。
プーチンは今回も、「制裁は効いてない!」といっています。確かに、短期的に見れば、「効いているが、破滅的ではない」といえるでしょう。しかし、クリミア併合後の推移を見れば、「必ず長期で効いてくる」と断言できます。
しかも、今回の制裁は、クリミア併合時とは比較にならないほど厳しいものです。まさに「地獄の制裁」と呼ぶにふさわしい。どんな影響が予想されるのでしょうか?