政治家個人より「党」が悪い。自民と統一教会が“組織的関係”であるこれだけの証拠

2022.08.17
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自民党が幕引きを図ろうとすればするほど、国民の反発が高まる旧統一教会問題。しかし自民幹部クラスは、旧統一教会との関係を正すべきはあくまで所属議員個人であり、党としての責任は今までも、そしてこれからもないと主張しています。この党の姿勢に真っ向から異を唱えるのは、立命館大学政策科学部教授で政治学者の上久保誠人さん。上久保さんは今回、自民と旧統一教会は組織的な関係にあり、党は大きな道義的責任を負っているとして、そう判断せざるを得ない理由を詳細に解説。さらに党幹部らが教団幹部と完全に絶縁することでしか、その道義的責任を果たすことはできないとしています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

内閣改造と党役員人事に批判殺到。岸田首相は責任をもって「旧統一教会との関係を絶つ」と決めよ

内閣改造・自民党役員人事が行われ、第二次岸田文雄内閣が発足した。当初、岸田首相は9月に人事を行う予定だったとされるが、1か月前倒しで実行された。これは、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党との関係が批判を浴びていることが背景にある。

岸田内閣には、何らかの形で旧統一教会との関係を認めた閣僚が7人いることが明らかになっていた。9月まで1か月の間に批判がさらに広がることを防ぐため、早期の人事に踏み切った。首相は、「新たに指名する閣僚や副大臣なども含めて、教団との関係を点検してもらいたい」と発言した。

しかし、内閣改造で7人の閣僚は全員退任しなかった。また、新たに入閣した閣僚と旧統一教会との関係も次々と明らかになっている。岸田首相は、旧統一教会と関係がある議員を外したのではなく、「旧統一教会との関係を見直すことを了解した人だけを閣僚に任命した」と言い訳した。だが、これは国民からわかりづらく、改造後に内閣支持率は回復しなかった。

岸田首相は、自民党と自民党と旧統一教会の間に「組織的関係はない」と強調している。自民党の政策決定に関しても、旧統一教会が不当に影響を与えたという認識はないという。また、茂木敏充党幹事長も、党所属議員が旧統一教会との関わりをそれぞれ関係を点検して、適正に見直すと強調している。

要するに、旧統一教会との関係は、個々の議員の政治活動であり、党には責任はないと主張しているのだ。私はこれに異議を唱えたい。なぜなら、自民党と旧統一教会の関係は「組織的な関係」であり、その責任は党にあるからだ。

最初に、自民党に対して、公平に指摘しておきたいことがある。政治にとっての宗教団体は、選挙の時の「集票マシーン」であり、それ以上でもそれ以下でもない。特定の宗教団体の強く主張する政策を、政治が国民全体の利益よりも優先して実現したことは、私の知る限りほとんどない。

これは、以前から私がよく言ってきたことなのだが、例えば政治と「神道」の関係だ。自民党の強力な支持団体として「日本会議」の存在が取り沙汰されることがある。日本会議と関連がある「日本会議国会議員懇談会」と「神道政治連盟国会議員懇談会」のメンバーだ。

だが、安倍晋三政権時、日本会議が主張する保守的な政策を自民党が実行することはほとんどなかった。むしろ、日本会議が忌み嫌っているはずの社会民主主義的な政策が次々と実現されている。例えば、日本会議は移民受け入れに反対だ。だが、外国人単純労働者の受け入れを決めた「改正入管法」の審議の時には、日本会議は完全に沈黙していた。

要するに、自民党議員は日本会議に対して、「日本は神の国」とか「八紘一宇」だとかリップサービスをしているだけだということだ。実は、神様なんてまったく信じていないと思う。神道とは何か、この国の国体は何かなど理解しようという気もない。票をもらうために、日本会議に調子を合わせているだけのように、私にはみえるのだ。

逆にいえば、日本会議は自民党に票だけ取られてきた。「安倍首相に裏切られた」という声も聞こえてきた。しかし、日本会議が自民党から離れることはないのだ。

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