地方行政にまで浸透。日本国が統一教会と手を切ることは可能か?

2022.08.31
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先日掲載の記事でもお伝えした通り、もはや国政のみならず地方議会にまで広く浸透している旧統一教会。さらに立命館大学政策科学部教授で政治学者の上久保誠人さんによれば、旧統一教会は全国に設置されているとある団体にも多額の寄付を行ってきているとのことで、彼らの影響力は日本の隅々にまで行き届いていると言っても過言ではないようです。上久保さんはそんな状況を踏まえた上で今回、旧統一教会と政治や行政が完全に手を切ることは困難だという見解を示すとともに、実現可能な「統一教会問題」の解決策を提案しています。

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プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

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「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)と政治との接点が次々と明らかになっている。岸田文雄首相や茂木敏充自民党幹事長らの「旧統一教会との関係は、個々の議員の政治活動であり、党には責任はない」と主張し、旧統一教会との関係の「点検と見直し」は議員本人にゆだねてきた。しかし、世論の批判が高まったことで、党所属全国会議員を対象とした、教団やその関連団体との接点の有無を調査する方針を固めた。

また、野党と旧統一教会の接点も明らかになっている。立憲民主党は、所属議員14人が関連イベントに出席するなどしていたとの調査結果を公表した。立憲民主党は、新執行部を発足させたが、岡田克也幹事長や安住淳国対委員長が旧統一教会系の世界日報のインタビューを受けていたという。しかし、泉健太代表は「自民のように支援を受け、教団関連施設を訪問するという関係ではない」と強調した。

日本維新の会も、党内調査で計15人に関連イベント出席などの接点があっと発表した。ただ、組織的支援や寄付はなかったとしている。

旧統一教会と政治の関係は、教団の関連団体のイベントに祝電を送り、出席して挨拶する。逆に教団関係者に政治資金パーティーの券を購入してもらう等の議員と教団の付き合いにとどまらない。

少なからず数の教団の信者が、国会議員の公設秘書、私設秘書として雇用されているという。また、信者が選挙の応援をボランティアで行ってきたという。「掲示板でのポスター貼り」「街頭演説でのビラ配り」「動員され聴衆として参加」「電話かけ」という選挙スタッフがやりたがらないような仕事も熱心にやるというのだ。

特に、信者が頼りになるのは、マンションの一室などを借りて、そこから有権者の家に一軒一軒電話して投票を呼び掛ける「電話かけ」だ。電話かけは選挙スタッフにとって最もストレスがかかる嫌な仕事だ。だが、信者は「信仰のため」だと言って、嫌がらずに一生懸命やるのだという。要するに、国会議員の政治活動に教団と信者がいろいろな形で参加している。それは、国会議員側からみても非常に重宝な存在だということだ。

また、中央にとどまらず、地方政界・行政にも広がっていることも明らかになってきている。私は、旧統一教会と政治・行政の関係が地方にも広がっていたことに驚きはまったくない。日本の国政選挙は、候補者の下で、首長、都府県会議員、市議会議員、地方の政党や後援会、支持団体からのスタッフなどがピラミッド型の組織となって選挙運動を展開する。旧統一教会と国会議員が選挙を通じてつながっているならば、地方は選挙の実働部隊としてより深く結びついているのは当然である。

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