川を泳いで敗走か。ウクライナの反撃に重火器を破棄して退却するロシア軍

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南部地域の領土を取り戻すべく、8月29日に反転攻勢に出たウクライナ軍。9月4日にはゼレンスキー大統領が東部と南部の3つの集落を奪還したと表明しましたが、この先紛争はどう展開していくのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、さまざまな情報を整理しつつ戦況を解説。さらにロシア・ウクライナ両国の思惑と、この戦争が鮮明化させたものについて考察しています。

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ウクライナ軍がヘルソン市に迫る

ウクライナ戦争はウ軍がヘルソン市の奪還を目指し、29日より総反撃を開始した。今後を検討しよう。

ウクライナ独立記念日の8月24日後の29日から南部ヘルソン州のドニエプル川西岸地域の奪還に向け、ウ軍は総反撃を開始した。

この反撃とともに、引き続き、ウ軍はクリミア半島やヘルソン州、ザポリージャ州のロ軍の弾薬庫や兵站拠点、司令部、空軍基地などを撃破して、ロ軍の補給をなくす動きをしている。

ロ軍は、戦争資源が枯渇してきたので、ドンバス方面に優秀部隊を集めて、この地点での突破を志向しているようだ。このため、ロ軍はイジューム西のノバ・フサリフカから突然、ドネツ川の橋を破壊して、対岸まで撤退した。

イジューム周辺の優秀な正規兵をドネツク周辺に移動させるようである。この正規兵の代わりに募集兵を充当するので、防衛の難しい地点を放棄するようだ。その募集兵も少なく、この地域は手薄になっている。

そのため、ウ軍は徐々に前進している。偵察隊を出して、ロ軍の空白地帯を見つけて、そこに浸透する方法で前進しているようだ。

プーチン大統領はドネツク州の完全制圧の期限を8月31日から9月15日に延期して、ロ軍に絶対命令を出したという。このため、ドネツクへの兵員増強がロ軍も必要になり、イジューム周辺やハルキウ周辺、スラビアンスク東側から多くの経験豊富な正規兵を移動させて募集兵に置き換えているようだ。

この2週間を見ると、ロ軍が前進できたのは、ドネツク近郊のピスキーだけであり、一度は押し戻したウ軍は、耐えられなくなり完全撤退した。

しかし、ピスキーから先に攻撃できない程ロ軍も消耗したようである。この情報でプーチンが動いた可能性がある。ドネツクに兵員を集めろと。現地指揮官と直接連絡しているので、全体戦局を見ずに、一部地域の戦術レベルで動員の命令を出したようだ。

これに関連して、多大な犠牲を払って前進したので、ロ軍は休戦をウ軍に申し出たが、時間稼ぎのような気もする。ドネツクに部隊を集める方向でロシア軍は動いているので、危ないような気がする。

このような動きから見ると、ロ軍の戦略は、南部も捨て、イジューも捨て、ドネツク市周辺を確保ということになる。

一方、ウ軍は、ドニエプル川のヘルソン市とノバ・カホフカの中間地点のリボグのポンツン・フェリーを破壊した。アントノフスキー橋やその付近のフェリー、カホフカ橋や付近の船橋も攻撃して、ドニエプル川西岸への補給を止める攻撃を継続しているが、フェリーの破壊もできるようになったようである。

これは、射程70km、誤差1mの「ボルケーノ」GPS誘導弾がウ軍に供給されて、PzH2000の155mm榴弾砲から打てるようになったことで、この弾は最後の段階で熱追尾ができるので動く目標でも狙えるからである。これで、ロ軍の補給は完全に止まることになる。

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