夫が詐欺容疑で告訴され、自身も窮地に陥っている国際政治学者の三浦瑠麗氏。その言動はこれまでもたびたび騒動の引き金となってきましたが、そもそも彼女の目標到達地点はどこに設定されていたのでしょうか。今回のメルマガ『小林よしのりライジング』では、『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』等の人気作品でお馴染みの漫画家・小林よしのりさんが、1年ほど前に三浦氏と会った際に聞き出したという「彼女の夢」を公開。さらに「成金としても偽物」として、そう判断せざるを得ない理由を綴っています。
この記事の著者・小林よしのりさんのメルマガ
ただ美人というだけでメディアが持て囃した三浦瑠麗とはいったい何者だったのか?
たかが文化人や言論タレントが、大して著書も売れていそうにないし、少なくともわしよりは売れてないのに、六本木ヒルズの高層階に住んでいたら、月100万はするから破産する。
その上、軽井沢に別荘を持って、永田町のど真ん中に事務所を構え、ヨットを楽しみ、あんなにセレブを気どっているのは、よっぽど夫が稼いでいるのだろうと思っていた。
なんであんなに権力に取り入るのが好きで、安倍首相への思い入れが強いのか、奇妙だとは思っていたのだが。
安倍首相が殺害されてからの三浦瑠麗の発言はあまりに酷く、統一協会がテレビで批判されるのが嫌でしょうがない様子で、カルトの被害者には「競馬でスッたって同じじゃないですか」と言い放ち、あまりに冷酷で不愉快でしょうがなかった。
それも、三浦の夫の弁護士が、統一協会の弁護士だと知ると、すべて合点が行く。
そもそも三浦の「リベラル」は商売の自由であって、弱者に対する配慮がなさすぎる。
三浦は権力と新自由主義的勝者が好きで、負け組は「自己責任」で済ませている。そこがわしの思想とは根本的に合わない。
東京地検特捜部が個人の自宅に捜索に入るというのは相当な大ごとだから、だいぶ以前から捜査を重ねて、既にかなりの証拠は固めているはずだ。
だとすれば、夫の逮捕は免れないかもしれない。あとは、妻の瑠麗まで捜査の手が及ぶかどうかだ。
三浦瑠麗が夫とほとんど共犯関係だったことは、彼女の発言から推理できるので、多くの人たちが彼女に同情していない。
何しろ三浦瑠麗は夫のビジネスを後押しているとしか思えない発言を、SNSで何度も発信しているし、なんと国会においても繰り返していたのだ。
それは中条きよしが新曲CDを国会で宣伝していたようなちっぽけな話ではない。
中国人による日本の土地購入を推進して、相互に依存する関係を構築すべきだなんて国会での発言は、まるで左翼だと思っていたが、これも夫がやっている、中国人相手に土地を売りさばく事業のためだったようだ。
これなど文字通りの「売国」であり、「反日」である。 三浦瑠麗は「反日という言葉を使ってはいけない」などと言っていたが、自分がそう言われたくなかっただけだったのだ。
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そして太陽光発電についても、三浦瑠麗は国会で推進させるための発言をしていた。
以前は原発をテーマにした「朝まで生テレビ!」で、わしの向かいの席、原発推進側の席に座っていたはずなのに、いつの間に太陽光発電に鞍替えしたのだろうかと思ったら、「カーボンニュートラル」(脱炭素)のためには、原子力も太陽光もどちらも有効だと言っていたらしい。巧妙な手を考えるものだ。
もちろんこれも自分の夫の事業のためだったわけで、太陽光パネルに関する問題がいろいろ指摘されていることについては、ツイッターで「太陽光発電にはダメな業者がたくさんある。それは事実で取り締まっていくべきです」と発言していたという。
今回、この発言が「ブーメラン」になったと揶揄されているが、そもそもこれは「いい業者かダメな業者か」なんて問題ではない。それ以前の話で、建設計画そのものの実効性がなかったのだ。
実現不可能な事業で10億円もの資金を巻き上げていた、完全な詐欺なのだ。
わしは三浦瑠麗とは何度も対談などで会っているが、今のところ最後に会ったのは昨年の1月頃、場所は六本木ヒルズだった。
その前年、週刊ポストの企画でわしと東浩紀と鼎談をしたのだが、その時に三浦瑠麗が、コロナ禍に怯えて会食もできないような人はインチキだとか言っていた。それをわしが律義に覚えていて、じゃあ仕方ないからということでヒルズの下のレストランで食事をしたのだ。
丁度その時、三浦は六本木ヒルズの住居をより高層階へと引越す作業をやっていて、睡眠不足でふらふらになってやってきた。
その食事中の会話で、わしは「あなたは一体何を目指しているの?何がやりたいの?」と聞いたのだが、すると三浦はこう答えたのだった。「選挙特番の司会をやりたい」
わしはそれを聞いて、田原総一朗になりたいということなのか?そんなものが夢なのか?と唖然としてしまった。
こんな私的な会話をバラしていいのかという批判はあるだろうが、三浦に騙されてデートまでしていたわし自身を嗤うために、あえて書いておこう。つまり三浦瑠麗は「思想家」ではないということを明確に確信した瞬間だったのである。
そもそも三浦瑠麗がわしに近寄ってきたのも、わしをセレブだと思っていたからだろう。
わしは「朝生」で、「わしは富裕層だ」と公言したが、それは新自由主義を批判するための作戦だった。新自由主義者は批判されると「貧乏人は資本主義が嫌いだからそう言うんだ」と内心ナメてくるから、それだったら自ら富裕層だと称して、富裕層が新自由主義を批判するという形にすれば、困るだろうという作戦だったのだ。
そして三浦は、わしの服装をやたらチェックして、内ポケットをのぞき込んでブランド名を見て、わしの服がドルガバ(ドルチェ&ガッバーナ)だと確認していたが、その後、三浦瑠璃もマネしてドルガバを着るようになっていた。
とにかく三浦瑠麗が目標としていたのは、ただただ「セレブ」だったのだろう。しかも、それは本物のセレブではない。極めてバブリーなセレブ、成金セレブだった。三浦は絵に描いたようなというか、漫画に出てくるようなセレブを現実に演じていたようなもので、「紛い物」感がにじみ出ていた。
それは『おぼっちゃまくん』のキャラ「袋小路金満」よりも劣る。袋小路くんは父親が一代で財を成した社長という設定で、本物の成金である。
しかし三浦瑠麗は自分で稼いだお金ではなく、詐欺で騙し取った金でセレブをやっていたわけで、成金としても「偽物」だったのだ。
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テレビでは、ただ美人だというだけで、三浦瑠麗はずっと長く需要を保てた。だから三浦は学者としての実績なんかそっちのけで、ひたすら「美人」に磨きをかけていた。
そしてバカバカしいことに、実際にルックスさえよければ、たったそれだけで、何も実態がなくても、バカなことばっかり言っていても、みんな惑わされてしまう。特にテレビは顕著である。
それは山口真由も同じで、最初に「羽鳥慎一モーニングショー」に出始めた頃は、ハーバード大学卒だの、東大主席だのと、番組内で秀才ぶりを必死にもてはやしていた。
ところが山口の実態は、皇統問題を竹田恒泰の本で勉強してしまうほどのバカで、役に立たない学校秀才でしかなかった。
本来なら入省した財務省で力を尽くさなければならないはずだったのに、それにも耐えられず、2年で辞めてしまった人間なのだ。
それで何をやっているのかと言ったら、愚にもつかないことしか言えないテレビタレントなのだが、ルックスだけで通用してしまう。そんなのばっかりだ。
六本木ヒルズの自宅ばかり話題になりがちだが、三浦瑠麗は永田町のど真ん中に事務所を構えている。
先述の週刊ポストの鼎談をした場所がその事務所で、外から中が見えるガラス貼りの部屋で、三浦はワインクーラーからワインを出して、猫を膝に抱いて、優雅そうに写真を撮らせながら話していた。それはもう、セレブでござい、これでもか!というようなわざとらしさだった。
2016年12月、わしは三浦をゴー宣道場のゲストに呼んだが、その時三浦は美容院で髪を「夜会巻き」にセットして、ものすごくめかし込んだドレスを着てやってきた。
ところが、後日会った時には「なんであんなみすぼらしい会場でやるのか」と文句を言われてしまった。
当時使用していた会場は大崎の「人事労務会館」という所だったが、ここがその名のとおり、労務者相手のセミナーでもやるようなリーズナブルな会議室で、その場と三浦のセレブ衣装は全く合わなかったのだ。
実を言うと、わしはあの会場を気に入っていた。最後は運営者がコロナ脳になってしまって使用をやめたが、わしはあんまり近代的なピカピカの高層ビルは好きではなく、あの3階建てのこぢんまりとした、大衆的な建物が落ち着けたのである。
だが、それは三浦瑠麗のバブリーな感覚には全く合わなかったのだ。何しろ「労務会館」だし。
しかもこの時は、年の最後の開催で終了後に忘年会をしたのだが、その後に女性門弟たちに取り巻かれて、二次会かと思って行ったら総がかりで吊し上げを食らってしまった。
みんな口々に「どうしてあんなのを呼んだのか」とか「あの人は貧乏人を差別している」とか言いまくり、散々に責め立てられた年の暮だった。
女性の直感は馬鹿にできない。わしが間違っていた。それが今回完全に明らかになってしまった。
三浦瑠麗がヘンな発言ばっかりしているのは百も承知だったが、コロナ対策への批判をやれる有名人はほとんどいなかった。この際、三浦を持ち上げて、わしの側につけてでもコロナ禍を終わらせたいと必死だったのだが、奇妙なことにワクチンを打ってしまったから、思想的脈絡が崩壊してしまって落胆した。
ようするにコロナに関しても、対策をやりすぎると経済が回らず、自分の旦那がやってる輸入品などを扱う商売が成り立たないから反対していただけだったようだ。
三浦がコロナワクチンに全く警戒心を持たず、打っている様子は、ホリエモンと同じで、人間の科学技術の産物であるワクチンで人工的にウイルスを死滅させられるという合理主義を、疑問をまったく抱かずに信じられる人間だったのだ。おそらく三浦は「薬害エイズ」のことなど、何も知らないのだろう。わしの『脱正義論』など読んでいない。
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三浦瑠麗は基本的に弱者に対する配慮が無いから、何をやっても何を語ってもチグハグになる。
だから経済重視と言っても、決して「経世済民」ではない。自分の経済、自分の儲けのみで、旦那の商売の擁護と応援に行きついてしまう。
それで自分さえ強者になればいいと、権力に擦り寄っていき、そのやり方でいままでは順調にやっていたわけだ。
もしも安倍晋三が生きていたら、東京地検も手を出せなかったかもしれないし、三浦はそこまで考えて安倍に近づいていたのかもしれない。だとしたら、安倍と近しかったからレイプ犯罪を握りつぶしてもらえた人物と何も変わらないことになる。
事実、被害者の伊藤詩織さんが加害者を告発し始めた時に、三浦は「これを短絡的に政権批判に結び付けてはいけない」などと発言しており、こいつ伊藤さんのことなんか何ひとつ同情していないなとわしは思った。
ところが、伊藤さんの著書『Blace Box』の帯の推薦文を、版元の文藝春秋社は三浦瑠麗に書かせたのだから、呆れてしまった。
三浦はこうやって、バカな業界人を巧みに騙すことに非常に長けていた。「リベラル」と言っても、商売の「自由」だけで、自由を奪われた弱者の「人権」には配慮しない。
ステータス思考の塊となり、セレブ気取りで自分を「勝ち組」として演出することだけ考えていたら、10億円もの詐欺をやっても良心が痛まない人間になってしまうというのがすごい。
六本木ヒルズからは、犯罪者は立ち退きになる。ホリエモンは刑期を終えて帰ってきたというのに、それでも「前科者」ということで追い出されたというから、いずれ三浦夫妻も立ち退かされることになるだろう。
三浦瑠麗に限らず、全面的に意見が一致する知識人なんかいないのだから、一部でも合うところがあれば、それを最大限に尊重しようという姿勢で、わしはこれまで知識人や政治家たちと接してきた。だがもう落胆することの方が多いようで、疲れてきた。
そしてわしは、これまでどれだけの人に騙されてきただろう?
一度、「小林よしのりは何故、人に騙されるのか?」というテーマで書いても面白いかもしれない。 (『小林よしのりライジング』2023年1月24日号より一部抜粋・文中敬称略)
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image by: 防衛大学校ホームページ, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons