保護対象から「観光資源」へ=トキ放鳥11年、野生400羽-膨らむ期待・新潟佐渡
国の特別天然記念物トキの放鳥が始まってから、25日で11年。新潟県・佐渡島では現在、自然界に400羽を超えるトキが生息しているとみられ、田んぼで餌を捕る姿などが目撃されるようになったという。環境省は野生のトキを観察できる展望施設「トキのテラス」を建設し、屋上を一般開放している。トキは保護や繁殖の対象だけでなく、地元自治体を中心に「観光資源」としての活用にも目が向けられ始めている。
かつてトキは日本中の里山で暮らしていたが、乱獲や環境汚染で数が激減した。繁殖を試みたが2003年に最後の1羽が死に、日本産野生種は絶滅。環境省は中国から提供を受けて繁殖を進め、08年から野生に戻す放鳥を開始した。現在、国内の飼育施設に195羽、野生下の推定生息数は405羽まで増えた。
飼育施設での一般公開は佐渡島以外でも、新潟県長岡市、石川県、島根県で行っている。一方、野生のトキは大部分が佐渡島で暮らす。佐渡市農業政策課トキ保護係は「佐渡なら野生下のトキを見ていただける」とアピールする。
環境省は野生のトキを観察する際、生態に配慮して「車内で見る」「トキに近寄らない」ことなどを決めている。佐渡市は18年10月、こうしたルールを尊重しつつ、トキがよく訪れる場所の近くに、車外から観察できるエリアを設けた。担当者は「家族連れ、カップル、ご年配の方まで、かなりの人が訪れている」と手応えを語る。
環境省の「トキのテラス」は高さ約10メートルで、屋上からトキや島の自然を観察でき、2階部分はトキの生態や人との共生について紹介する展示室を設置する予定。建物はできており、展示室が完成するまでの間、屋上を一般に開放している。環境省首席自然保護官の沢栗浩明氏は「野生のトキが増えている中で、生育に影響がないように観察する役割が果たせたらいい」と期待を込めた。(2019/09/24-07:25)