釜石から「ありがとう」=復興の姿、世界に-被災者ら声援・ラグビーW杯

2019.09.26
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by 時事通信

試合開始前に観客席で振られる大漁旗=25日、釜石鵜住居復興スタジアム

試合開始前に観客席で振られる大漁旗=25日、釜石鵜住居復興スタジアム

 「サンキュー、フロム、カマイシ」。東日本大震災で被災した小中学校跡地に建てられた岩手県釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで25日、ラグビーワールドカップ(W杯)が初開催された。観客と選手は犠牲者を悼み、被災者らが復興の姿や支援への感謝を世界に向けて表現した。
 入場ゲートの一角には、市内の小中学生が三陸産のホタテなどの貝殻で作ったモザイクアート「ありがとう貝画(かいが)」が飾られた。スタンド内には50本以上の大漁旗が掲げられ、入場者を歓迎した。


ラグビーW杯・フィジー―ウルグアイ戦開始前に、黙とうする観客ら=25日、釜石鵜住居復興スタジアム

ラグビーW杯・フィジー―ウルグアイ戦開始前に、黙とうする観客ら=25日、釜石鵜住居復興スタジアム

 試合前、市内の全小中学生約2000人が、自分たちでつくりこの日のために練習した歌「ありがとうの手紙」を合唱。「Thank you」などと支援への感謝を示す大幕をピッチに広げた。
 航空自衛隊の曲技飛行チーム、ブルーインパルスは震災復興を祈り、不死鳥をかたどった編隊で飛行。国歌斉唱の前には、約1万4000人の観客と選手らが黙とうをささげた。


ラグビーW杯・フィジー―ウルグアイ戦の前に、会場上空を飛行する航空自衛隊の曲技飛行チーム、ブルーインパルス=25日、釜石鵜住居復興スタジアム

ラグビーW杯・フィジー―ウルグアイ戦の前に、会場上空を飛行する航空自衛隊の曲技飛行チーム、ブルーインパルス=25日、釜石鵜住居復興スタジアム

 試合はフィジーとウルグアイが計8トライを取り合い、格上とされたフィジーが敗れる波乱の展開に。観客からは絶え間なく大歓声が上がった。震災の年に生まれた市立小佐野小学校3年の長谷川優奈さん(8)は「タックルの迫力がすごかった。楽しかったので、また見たい」と興奮した様子で話した。
 同校の佐々木拓磨教諭(34)は「子どもの目が輝いていた。歌も練習以上」と感涙。佐々木さんは、地元チーム釜石シーウェイブスの選手でもある。「W杯の勢いをなくさぬよう頑張らないといけない」と決意を新たにした。


被災地の復興象徴のスタジアムで行われたラグビーW杯・フィジー―ウルグアイ戦=25日、釜石鵜住居復興スタジアム

被災地の復興象徴のスタジアムで行われたラグビーW杯・フィジー―ウルグアイ戦=25日、釜石鵜住居復興スタジアム

 盛岡市の団体職員望月香奈子さん(38)は、親族2人が鵜住居駅前で津波の犠牲になった。「世界中の人が鵜住居のことを知ってくれて良かった」と慰霊碑に報告した。
 「特別な意味がある」。復興の様子を見に訪れた千葉県浦安市の会社員丸山慎二さん(47)は、「歌に感動した。まだまだ大変なこともあるだろうけど、これをきっかけにこれからも頑張ってもらいたい」と話した。(2019/09/26-07:12)

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