中ロの宇宙、電子戦兵器警戒=AI搭載無人機も-防衛白書

2019.09.28
0
by 時事通信

今年5月に東シナ海などを飛行した中国のY8電子戦機。自衛隊や米軍の電波情報などを収集している可能性がある(防衛省提供)

今年5月に東シナ海などを飛行した中国のY8電子戦機。自衛隊や米軍の電波情報などを収集している可能性がある(防衛省提供)

 2019年版防衛白書が27日、公表された。宇宙、サイバー、電磁波を使った電子戦など安全保障上の新たな領域で、各国が優位性を競っていると指摘。中国やロシアなどを例に挙げ、相手のネットワークを無力化する先端技術を利用した兵器などの開発動向にも言及した。「テクノロジーの進化が安全保障のあり方を根本的に変えようとしている」と、警戒感をにじませた。
 「宇宙空間をめぐる安全保障の動向」と題する解説では、対衛星兵器を開発している国として中ロを例示。衝突などで相手の衛星の機能を喪失させる「キラー衛星」や、高出力レーザーで衛星を破壊する兵器の開発・実験をしている可能性を指摘した。
 サイバー空間の脅威では、中国国家安全部と関連する「APT10」と呼ばれるグループによる知的財産を狙ったサイバー攻撃を紹介。日本でも「APT10による民間企業、学術機関などへの長期にわたる広範な攻撃が確認されている」とした。
 電子戦では、電磁波が指揮統制のための通信機器、レーダー、ミサイル誘導装置に使用されていることを挙げ、相手の通信を妨害するなどの能力で優位に立とうとする米国・中ロの動向を記述。中国については、電子戦部隊による全地球測位システム(GPS)衛星への妨害作戦や、日本周辺に飛来する電子戦機の存在を指摘した。
 このほか、形勢を一変させる「ゲーム・チェンジャー」の軍事科学技術として、人工知能(AI)などが重視されている点も強調。中国が17年にAIを搭載した無人機119機を群れのように飛行させ、昨年は200機で成功した事例を紹介した。AI無人機が人間の関与なしに自律的に敵を識別し、殺傷する「自律型致死兵器システム(LAWS)」に発展する可能性にも触れた。
 音速の5倍以上で飛行し目標を破壊する「極超音速滑空兵器」の開発に米中ロがしのぎを削っているとも指摘。ロシアが年内に、中国が20年にも配備する見通しを記述。同兵器は弾道ミサイルより探知や迎撃が困難とされている。(2019/09/28-07:27)

print

人気のオススメ記事