周辺海域、前夜に漁船=自治体や漁業関係者、北のミサイル発射に憤り

2019.10.02
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by 時事通信

ミサイル発射を受け、危機管理連絡会議を開いて情報共有を図る島根県職員=2日午前、同県庁

ミサイル発射を受け、危機管理連絡会議を開いて情報共有を図る島根県職員=2日午前、同県庁

 北朝鮮から発射されたとみられるミサイルが2日、島根県島後沖の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。周辺海域は操業する日本の漁船も多く、前夜まで付近を航行していた船もあった。「たまったもんじゃない」。ミサイル発射の暴挙に、自治体や漁業関係者からは怒りと不安の声が上がった。
 島根県はミサイル発射の一報を受け、自治体や漁協などから情報収集を急いだ。午前9時前までに漁船や水産高校の練習船、隠岐諸島と本土を結ぶ定期船などの安全が確認され、記者団の取材に応じた丸山達也知事は「北朝鮮に対して、同盟国と連携して毅然(きぜん)とした態度で対応してもらいたい」と政府に求めた。
 定置網漁などを行うJFしまね美保関支所(松江市)の職員(45)は「生活しないといけないから、『ミサイルが落ちたら困る』といって漁に出ないわけにいかない」と困惑した様子だった。
 鳥取県は9時半から情報連絡会議を開き、県や県警本部、自衛隊の担当者らが出席。平井伸治知事は冒頭、「このような暴挙は言語道断」とミサイル発射を強く批判し、関係機関との連絡などを徹底するよう呼び掛けた。
 鳥取県沖合底曳網漁業協会の船本源司会長(65)は「島後沖には昨晩までうちの船がいた。主漁場をミサイル発射実験に使われたら、たまったもんじゃない」と語気を強めた。カニ漁のシーズン到来を控え、「ミサイルが発射される中、漁場を確保しなければならないのは危険」と怒りをあらわにした。
 一方、東京・市谷の防衛省では幹部会議が開かれ、職員が情報収集に追われた。ある制服組の幹部は「明確な意図は分からないが、最近のケースと落下地点が異なる。さらなる情報収集と分析が必要だ」と話した。
 別の幹部は「米朝実務者協議での交渉を有利に進めるためのけん制ではないか。台風も近づいているので、協議前は今日しかなかったのかもしれない」と発射のタイミングを指摘した。その上で「EEZ内に落とすことで、日本の反応をうかがうという狙いもあるのではないか」と話した。(2019/10/02-13:28)

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