「四つ目の研究」結実=3度の失敗糧に-吉野さん・ノーベル化学賞

2019.10.10
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by 時事通信

ノーベル化学賞の受賞が決まり、インタビューに答える吉野彰・旭化成名誉フェロー=10日未明、東京都千代田区

ノーベル化学賞の受賞が決まり、インタビューに答える吉野彰・旭化成名誉フェロー=10日未明、東京都千代田区

 リチウムイオン電池は、今年のノーベル化学賞受賞が決まった吉野彰・旭化成名誉フェロー(71)が取り組んだ四つ目の研究テーマだった。それまでに手掛けた三つは実用化に至らず、「研究を世の中に広めて世界を変えられる」と夢を抱いた吉野さんにとって不本意な結果だったが、失敗から得た教訓が画期的な発明に導いた。
 京都大大学院の修士課程を修了した吉野さんは1972年、旭化成に入社。「企業は実際の製品にして世の中に広められる。大学の研究に比べると活気があり、やりがいがあると感じた」という。
 しかし、81年にリチウムイオン電池の研究に着手するまでの約10年は「1人でちょこちょこやってみて、だめだったら次のテーマに行くことの繰り返し」だった。それでも吉野さんは「技術が足りないとか、将来のマーケットを読み違えたとか、当然原因はあった」といい、教訓を拾い上げることを忘れなかった。
 失敗の中で鍛え上げられたのは、社会で求められる技術の流れを読む力で、「匂いみたいなもの」だと言う。開発当時に大きな市場を誰も予想しなかったリチウムイオン電池は、通信技術や半導体技術の進歩と相まって、またたく間にIT革命の立役者となった。
 「ITに続く次の革命は地球環境革命。今はIT革命前夜と同じ雰囲気がプンプンしている」と吉野さん。「バッテリーを積んだ自動運転の車が世界に広まれば、それが電気をためるインフラとなる」と指摘する。社会が変わる中で、どのようなリチウムイオン電池が必要なのかニーズの見極めが重要だとし、「そこに向けて技術を改良していかないといけない」と強調した。(2019/10/10-13:10)

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