浸水で「酒米駄目に」=蔵元の被害深刻-「飲んで応援」の動きも・福島

2019.10.21
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by 時事通信

酒蔵の前でたたずむ大天狗酒造の伊藤滋敏社長=18日午前、福島県本宮市

酒蔵の前でたたずむ大天狗酒造の伊藤滋敏社長=18日午前、福島県本宮市

 台風19号による浸水は、各地の酒蔵にも影響を及ぼした。酒米や製造設備などが水没し、再開のめどが立たない蔵元も。深刻な被害状況が明らかになる一方で、インターネット交流サイト(SNS)では「飲んで応援しよう」という呼び掛けが広がっている。
 阿武隈川が氾濫し、広範囲で浸水被害が発生した福島県本宮市。1872(明治5)年創業の大天狗酒造では、酒蔵が約50センチ浸水した。伊藤滋敏社長は(64)は「酒米が全部駄目になった」と肩を落とす。
 今週から仕込み作業を始める予定だったが、清酒製造設備も被害を受け、再開は見通せない。「酒造組合や米農家などと相談し、まずは酒米を確保したい」と話す。
 同県郡山市では、多くの酒蔵から精米を請け負う工場が水没。保管していた酒米や機材が被害を受けた。復旧に時間がかかるため県酒造組合が別の精米工場を探しているが、各酒蔵での生産が遅れる可能性が高いという。
 そうした中、支援の動きも出ている。SNSでは、被災地の日本酒を「飲んで応援しよう」との呼び掛けが拡大。大天狗酒造では、ラベルが汚れてしまった日本酒を購入する客が相次ぎ、全て売れた。日本酒を買い求めた郡山市の主婦(52)は「自分にできるのはお酒を買うことくらい。少しでも助けになればと思って来た」と語った。
 酒蔵同士の助け合いも。福島市の金水晶酒造店では、店頭で大天狗酒造の日本酒を代理販売した。伊藤社長は「ボランティアで掃除の手伝いに来てくれる人もいる。感謝の気持ちでいっぱいだ」と話した。(2019/10/21-07:11)

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