全国一律難しく=治水対策、新たな局面-台風19号

2019.10.24
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by 時事通信

遊水地の機能を持たせるため高床式構造が採用されている横浜国際総合競技場=23日午後、横浜市

遊水地の機能を持たせるため高床式構造が採用されている横浜国際総合競技場=23日午後、横浜市

 台風19号では、71河川139カ所(23日時点)で堤防が決壊するなど大きな被害が出た。首都圏では放水路や遊水地といった大規模施設が効果を発揮したが、治水対策は「量・場所・時間をはじめ、雨の降り方で現象が変わる」(国土交通省治水課)ため、全国一律の対策では対応が難しいのが現状だ。
 横浜市を流れる鶴見川では、これまで多目的遊水地の整備や緑地保全などの治水対策を進めてきた。背景には、市街化の進行により雨水が一気に川に流れ込むようになるなど、河川整備だけでは水害防止が困難になったことがある。ハード面では、横浜国際総合競技場の周辺を遊水地として整備し、洪水時に水をため込む機能を持たせた。
 12日に上陸した今回の台風では、2003年6月の運用開始以来3番目の量となる約94万立方メートルの洪水を貯留。競技場は高床式の構造で河川の水が施設に入り込まなかったため、翌13日にはラグビーワールドカップ日本対スコットランドの試合が無事に行われた。地域一体の治水対策が効果を発揮した好事例だ。
 こうした先進的な対策であっても過去の経験をベースに検討されている。しかし、台風19号では、24時間降水量が103地点で観測史上1位を更新するなど、治水対策の前提条件は変わりつつある。
 国交省の有識者検討会は今月、「気候変動などの影響が治水対策の進捗(しんちょく)を上回る新たなフェーズに突入した可能性」を指摘。計画を上回る洪水に対する流域一帯での減災対策の必要性などを提言している。(2019/10/24-13:35)

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