真珠養殖に異変=アコヤガイ大量死、生産へ影響-愛媛など

2019.10.26
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by 時事通信

大量死したアコヤガイ(下灘漁協提供)

大量死したアコヤガイ(下灘漁協提供)

 愛媛、三重、長崎県などで今夏、真珠養殖に使うアコヤガイの大量死が発生した。詳しい原因は不明だ。真珠養殖は稚貝の育成から出荷まで3~4年必要。地元関係者は対策に乗り出しているが、今年の異変で稚貝不足が深刻化すれば、2021年以降、真珠生産への影響が懸念される。
 真珠は、アコヤガイの母貝に埋め込んだ球状の核に分泌物が層を形成し、できあがる。
 アコヤガイ生産量が全国1位の愛媛では7月下旬ごろから大量死が発生。9月末時点で、稚貝の養殖数は約1100万個と平年より7割近く減った。愛媛大学農学部の三浦猛教授によると、大量死は1996年以来。原因は特定できていないが「(餌不足や過密な養殖環境など)複合的な要因」(三浦教授)が疑われている。
 大量死に伴う被害額は母貝と合わせて約3億円(9月末現在)。アコヤガイの被害は、多額の収益を生む真珠の生産減に直結する。
 県の真珠生産額(18年度が約61億円)は、主な輸出先の中国の景気変調などから、19年度は52億円、20年度は40億円程度に減る見通し。今夏に大量死した稚貝を真珠養殖に用いるはずだった21年度以降は、供給不足で一段と減少する恐れがある。
 大きな被害を受けた下灘漁協(愛媛県宇和島市)では稚貝の再生産に乗り出した。同漁協と県で計850万個を10月中に養殖業者に供給する。ただ、死んだ稚貝の数は2000万個以上に上り、愛媛の真珠養殖は一時的な縮小が避けられない。
 同漁協の武部洋安組合長は「養殖業者は高齢者が多く、1年休んだら再開しようという気になれない」と表情を曇らせた。(2019/10/26-13:39)

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