日バチカン、核めぐり溝 ローマ教皇来日で浮き彫り

2019.11.26
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by 時事通信

各国大使らとの集いであいさつする安倍晋三首相(右)。左はフランシスコ・ローマ教皇=25日午後、首相官邸

各国大使らとの集いであいさつする安倍晋三首相(右)。左はフランシスコ・ローマ教皇=25日午後、首相官邸

 フランシスコ・の来日は、核兵器に関する考え方をめぐる日本とバチカンの溝を浮き彫りにした。両国は核廃絶という究極的な目標は共有しているが、核抑止力も許すべきではないと訴えた教皇に対し、日本政府は抑止は当面必要との立場を変えなかった。
 「日本は唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け、国際社会の取り組みを主導していく使命を持つ国だ」。首相は25日夜、教皇とともに臨んだ各国大使らとの集いであいさつし、核廃絶への決意をアピールした。
 続けて演説した教皇は「原爆の破壊が二度と繰り返されないようあらゆる手段を促進してほしい」と呼び掛けただけで、この場では違いは露呈しなかった。
 しかし、教皇は24日の被爆地での演説で「核戦争の脅威での威嚇に頼りながら、平和を提案できるのか」と核抑止を批判している。この言葉は核保有国だけでなく、米国の「核の傘」で守られる日本にも向けられていると見られている。


各国大使らとの集いで演説するフランシスコ・ローマ教皇。左は安倍晋三首相=25日午後、首相官邸

各国大使らとの集いで演説するフランシスコ・ローマ教皇。左は安倍晋三首相=25日午後、首相官邸

 北朝鮮などの核兵器の脅威にさらされる日本は、米国の「核の傘」は安全保障の基礎との立場。官房長官は25日の記者会見で「核を含めた米国の抑止力を維持・強化していくことが現実的で適切な考え方だ」と教皇に事実上反論した。
 核兵器禁止条約をめぐっても見解は異なる。教皇は演説で条約発効の必要性を訴えたが、菅長官は会見で「条約は現実を十分踏まえず作成されたため、核兵器国のみならず非核兵器国からも支持を得られていないのが現実だ」と述べ、批准に否定的な立場を改めて強調した。
 政府関係者によると、首相と教皇との会談には当初、日本側から複数の政府関係者が陪席する予定だったが、バチカンの要請で同席者は通訳のみとなった。
 日本政府の姿勢に野党からは批判が出ている。共産党の書記局長は会見で「日本政府は世界の宗教界の最高指導者の一人である教皇の発言の重さを正面から受け止めるべきだ。唯一の戦争被爆国としてメッセージを聞き流せば、歴史と世界に背を向けることになる」と語った。(2019/11/26-07:11)

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