女子トイレ使用制限は違法 性同一性障害の経産省職員勝訴―国に賠償命令・東京地裁

2019.12.12
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by 時事通信

 性同一性障害と診断され、戸籍上は男性のまま女性として勤務する50代の経済産業省職員が、女子トイレの使用を制限され精神的苦痛を受けたなどとして、国に約1650万円の慰謝料と処遇改善を求めた訴訟の判決が12日、東京地裁であった。江原健志裁判長は「制限は自認する性に即した生活を送る利益を制約しており違法」として、国に132万円の賠償などを命じた。弁護団によると、性的少数者(LGBT)の職場環境改善をめぐる初の判決という。
 訴状などによると、職員は男性として入省後、性同一性障害と診断され、2010年に許可を得て女性として勤務を開始。ただ体質の問題で性別適合手術を受けられず、戸籍変更はできなかった。同省側は女性の身なりでの勤務や女子休憩室の使用は認めたが、女子トイレについては勤務階とその上下階のトイレを使わないよう指示した。
 職員は人事院に不服を申し立てたが退けられ、15年に人事院判定の取り消しと慰謝料などを求め提訴。国側は抵抗感を持つ女性職員がいるなどとして「裁量権の範囲内」と主張していた。
 判決で江原裁判長は「自認する性に即した社会生活を送ることは重要な法的利益」と指摘。職員は女性と認識される度合いが高かったことなどを理由に、同省側が言うトラブルの可能性は抽象的で、制約は正当化できないと判断した。
 また、同省側がトイレを自由に使うためには戸籍上男性だとカミングアウトするよう求めたことは、「裁量権の乱用」と認定。人事担当者の「手術をしないなら、もう男に戻ったら」との発言も許容の限度を超えているとした。
 経産省の話 国の主張が認められなかった。控訴するかは判決を精査し、関係省庁と相談の上、対応する。(2019/12/12-19:04)

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