日航機事故への思い胸に 予約変更で生き延びた男性死去

2020.04.05
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by 時事通信

西山徹さんの葬儀会場入り口に、遺影と共に置かれた変更後の日航機の航空券=3月26日、横浜市緑区

西山徹さんの葬儀会場入り口に、遺影と共に置かれた変更後の日航機の航空券=3月26日、横浜市緑区

 1985年に乗客乗員520人が犠牲になった日航機墜落事故。この123便に乗るはずだったものの、直前に予約を変更して助かった男性が亡くなった。「自分の身代わりになった人がいる」との思いを持ち続けた男性は、変更後の航空券をプラスチックのカバーで覆い、いつも手元に置いていた。
 男性は横浜市青葉区の西山徹さん。3月19日未明に心不全のため死去、80歳だった。電子部品会社に勤め、音響機器メーカーでは役員も務めた。
 妻の史子さん(79)は「どんな小さな部品、たった一つでも日本全国どこへでも直接届けに行った。帰って来たと思ったら、また出張。がむしゃらに働いたのは、自分の代わりに犠牲になった人に申し訳ないという思いがあったのでは」と振り返った。


位牌(いはい)を持つ西山徹さんの妻史子さん。戒名の「恵風清徹信士」の「清」という字には、人のために祈ることができる清らかさという意味が込められているという=3月26日、横浜市緑区

位牌(いはい)を持つ西山徹さんの妻史子さん。戒名の「恵風清徹信士」の「清」という字には、人のために祈ることができる清らかさという意味が込められているという=3月26日、横浜市緑区

 18年ほど前にかかった喉頭がんのため声はかすれ、10年余り前には緑内障で両目の視力を失った。「それでも常に前向きだった」と長女の内藤由美子さん(49)は話す。退職すると事故のことを思ってか、大学の社会人コースで仏教を学んだ。毎朝、ラジオのニュースに耳を傾ける日課も欠かすことはなかったという。
 兵庫県丹波篠山市の実家に帰省するため、事故が起きた123便の予約を取ったものの、急な出張で出発日を85年8月9日に変更した。34年余りの時を経て、棺おけに納められた羽田発大阪・伊丹行きの航空券は、西山さんと共に天国に旅立った。
 葬儀で経を読んだ曹洞宗の僧侶は、日航機事故をめぐる話に感銘を受け、犠牲になった見ず知らずの人のために祈ることができる清らかさという意味を込め、戒名には「清」という字を入れたという。(2020/04/05-07:10)

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