京アニ放火、動機解明が焦点 入院長期化、異例対応―身柄確保から10カ月超

2020.05.27
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by 時事通信

京都アニメーション第1スタジオ放火殺人事件の青葉真司容疑者=2019年7月16日、京都府宇治市(防犯カメラから)

京都アニメーション第1スタジオ放火殺人事件の青葉真司容疑者=2019年7月16日、京都府宇治市(防犯カメラから)

 京都アニメーションの放火殺人事件で逮捕された青葉真司容疑者(42)=さいたま市見沼区=は、全身やけどのため、一人で食事もできない状態が続く。京都府警は逮捕に先立ち、勾留先に介助人を配置するなど異例の受け入れ準備を進めた。捜査の焦点は事件の背景にある動機の解明だ。
 捜査関係者によると、皮膚移植手術などを受けた青葉容疑者は、命の危険がない状態まで回復。京都市内の病院の「一般人は自由に出入りできない場所」(捜査幹部)で治療やリハビリを続けてきた。
 ただ、今も長時間座ることや、自分でトイレに行くことはできない。府警幹部は「日常生活を送れるようになるには何年もかかる」と話す。
 一方、捜査当局は、入院長期化に伴い、狂信的な京アニファンによる襲撃などを懸念。事件への思い込みや刷り込みが生まれ、「供述が汚染されるリスクも高まる」(別の捜査関係者)と、早期逮捕を模索してきた。
 取り調べに向け、医師と相談し、介護用ベッドや介助人を手配。横たわったままの聴取にも耐えられる環境を整えるなど異例の対応で逮捕に踏み切った。
 最大の焦点となる動機について、青葉容疑者は事件直後、駆け付けた警察官に「小説を盗まれたから火を付けた」と話した。実際に複数の小説を京アニに応募していたが、捜査幹部は「大量殺人はよほどの理由がないと実行に移さない。他に濃い理由はないのか」といぶかる。
 京都周辺の土地勘はなかったとみられる青葉容疑者が、事件をいつ計画し、どのように準備したかも不明だ。襲撃時にスマートフォンや地図を所持していた痕跡はなく、現場までの道のりをどう把握したかも分かっていない。
 府警は医師の意見などを踏まえつつ、容体に配慮して慎重に取り調べを進める方針。責任能力の有無を調べる鑑定留置もするとみられる。捜査幹部は「われわれの使命は安全に刑事手続きに乗せ、きちんと調べて公判にかけることだ」と語気を強めた。(2020/05/27-13:32)

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