米大統領発言に困惑 G7「引き続き重要」―日本政府

2020.06.02
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by 時事通信

 日本政府は、トランプ米大統領が先進7カ国首脳会議(G7サミット)を「時代遅れ」と評し、参加国拡大を打ち出したことについて、困惑している。新型コロナウイルス対応や香港情勢をめぐり対立を深める中国への「包囲網」を構築する狙いとみられるが、真意は不明なためだ。政府は情報収集に追われている。
 トランプ氏は当初、新型コロナ流行後の「正常化」をアピールするため、今月下旬にワシントンへG7首脳の招待を検討していた。しかし、これに一部首脳が難色を示すと急きょ延期を表明。それだけでなくG7の現在の枠組みに疑問を投げ掛け、ロシア、韓国、オーストラリア、インドの4カ国を招待する意向を示した。
 官房長官は1日の記者会見で「G7の枠組みは主要国間で国際社会が直面する課題に取り組む方針、連携協力を確認する場として引き続き重要だ」と述べ、G7拡大論をけん制した。
 政府関係者は「トランプ氏が世界地図を見ながら中国包囲網を考えたとしか思えない」と推測する。ただ、日中関係は今春の習近平国家主席の国賓来日が延期となったままで、外務省関係者は「米中対立がさらに激化すれば、いつまでも呼べなくなる」と懸念を漏らす。
 トランプ氏の唐突な表明に、日本外務省筋も「米側にも真意が分かる人がいない」と困惑を隠さない。名前が挙がった4カ国のうち、ロシアと韓国は中国と経済的な結び付きが強く、中国包囲網で足並みをそろえることは難しいとみているためだ。
 また、ロシアは2014年のクリミア併合で当時のG8メンバーから排除された経緯があり、復帰には他のメンバー国の反発も予想される。
 過去のサミットには中国やインドなどが参加した例もあり、議長国の米国の判断でオブザーバー国を招待することは可能だ。日本政府関係者は「トランプ氏の言い方は招待ではなく、新規メンバーとして呼ぶイメージだ」と指摘した上で、「そうであれば(実現は)難しい」と語った。(2020/06/02-07:08)

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