ダム計画、11年前に中止 熊本・球磨川水系、県など反対―議論再燃可能性も

2020.07.12
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by 時事通信

熊本県五木村から見た川辺川ダムの建設予定地=2009年9月

熊本県五木村から見た川辺川ダムの建設予定地=2009年9月

 熊本県を襲った豪雨で氾濫した球磨川水系では、かつて治水などを目的とした「川辺川ダム」の建設計画が存在した。しかし、一部の流域市町村や県の反対を受け、国は2009年に中止を決定。ダムに代わる治水策を検討していたが、抜本的な対策を取ることができなかった。
 蒲島郁夫知事は豪雨被害の後、川辺川ダムについては従来の方針を維持すると表明する一方、ダムの在り方を含め対応を検証するとした。計画廃止の法的手続きは取られていないため、建設をめぐる議論が再燃する可能性もある。
 球磨川流域では1963年から3年連続で大水害が発生し、建設省(現国土交通省)が66年、最大支流の川辺川(相良村)に洪水対策でダムを建設する計画を発表。総貯水量1億3300万トンで、完成すれば九州最大規模になる予定だった。
 治水や利水、発電などの多目的ダムとする計画だったが、長期化で治水以外の事業者が撤退。総事業費も当初の約10倍に膨らみ、推進派と反対派の対立で、用地取得や家屋移転はほぼ完了したものの、本体工事には着手できなかった。
 環境保護など建設反対の世論が盛り上がる中、流域の市町村長が相次いで計画の白紙撤回を要求。蒲島知事も就任半年後の2008年9月に反対の意向を表明し、当時の民主党政権が中止を決めた。その後、国や県などはダム建設以外の治水策を検討し、昨年11月に堤防のかさ上げなど10種類の案を提示していた。
 蒲島知事は5日、治水策が間に合わなかったことを「非常に悔やまれる」と発言。一方で、「(建設反対の)決断は県民の意向だった。ダムによらない治水を極限まで考えたい」と述べた。
 地元の市民グループ「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表(79)は、「今回の豪雨は想像を超える水量で、ダムが造られていても意味はなかったと思う。最近は異常気象もあり、50年前と同じ治水計画は進められない」とけん制した。(2020/07/12-07:14)

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