温泉開放、被災者に癒やし ボランティアにも励み―コロナ警戒の声も・熊本人吉

2020.07.13
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by 時事通信

浸水被害を免れ、被災者に温泉を無料開放している「相良藩願成寺温泉」=12日、熊本県人吉市

浸水被害を免れ、被災者に温泉を無料開放している「相良藩願成寺温泉」=12日、熊本県人吉市

 球磨川の氾濫で多くの家屋が浸水した熊本県人吉市では、被害を免れた人吉温泉の入浴施設や旅館が被災者に温泉を無料提供し、避難生活で疲れた体や心を癒やしている。ボランティアも利用しており、復興への活力になっているが、新型コロナウイルス感染を懸念する声もある。
 同市の入浴施設「相良藩願成寺温泉」は、豪雨被害の発生した4日以降も休まず営業を継続。県が被災者向けの無料券を発行する前から無料開放を決め、毎日100人以上が利用する。オーナーの新堀妙子さん(74)は「何かしなくてはという一念。泣いて喜んでくれた方もいた」と話す。世話をする下宿の高校生を集めてボランティアもしているという。


浸水被害を免れ、被災者に温泉を無料開放している「相良藩願成寺温泉」のオーナー新堀妙子さん=12日、熊本県人吉市

浸水被害を免れ、被災者に温泉を無料開放している「相良藩願成寺温泉」のオーナー新堀妙子さん=12日、熊本県人吉市

 泥のかき出しなどのボランティア作業を終えた県立球磨工業高校3年の緒方飛鳥さん(17)は「やってもやっても終わらず大変だが、入浴したら疲れが取れて頑張れる」。自宅の冠水で避難所暮らしの山田良孝さん(70)は「家の片付けの疲れが取れる」と風呂上がりにリラックスした表情。「避難所では寝づらく、風呂がないと体が変になっていた」とありがたがった。
 人吉市内では他に4施設が被災者に無料で風呂を提供する。「いわい温泉湯の宿さ蔵」の吉村晃一支配人(37)は「困っている人のために」と意気込む。被災者や復旧工事の人たちで普段以上ににぎわう中、「密」が生じる時間帯もあるが、消毒以外の対策は難しい。吉村さんは「マスクを用意できない人もいるが、今はコロナどころじゃない」と話した。


無料開放された「相良藩願成寺温泉」を利用する被災者=12日、熊本県人吉市

無料開放された「相良藩願成寺温泉」を利用する被災者=12日、熊本県人吉市

 一方、別の施設の代表者(76)は「コロナがなければどれだけ来てもらってもいいんだが」と無料開放に消極的だ。「(開放の)要請はあるが、混雑するし常連以外も来る。人数の割り当てなど対策をしてほしい」と要望した。(2020/07/13-20:32)

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