「GoTo」強まる延期論 22日スタートに安倍首相も「迷い」

2020.07.16
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by 時事通信

衆院予算委員会の閉会中審査で答弁する西村康稔経済再生担当相(中央)=15日午前、国会内

衆院予算委員会の閉会中審査で答弁する西村康稔経済再生担当相(中央)=15日午前、国会内

 政府の旅行需要喚起策「Go To トラベル」キャンペーンが、22日のスタートを目前に壁に直面している。東京都を中心に新型コロナウイルス感染者が急増しているためだ。感染者の流入を懸念する各地の首長からは見直しを求める発言が相次ぎ、野党も追及を強める。ただ、鳴り物入りで実施を決めた政策の転換は安倍政権への打撃が避けられず、「首相も官房長官も迷っている」(政府関係者)のが実情だ。
 「新型コロナは収束したと判断したのか」。15日の衆院予算委員会で、国民民主党の元国土交通相は、西経済再生担当相に政府見解をただした。4月に閣議決定した文書に、キャンペーンの実施時期を「新型コロナ感染症の拡大が収束した後」と明記していたためだ。西村氏は「緊急事態宣言を出したときの、あの大きな流行は収束させた」などと苦しい答弁に終始した。
 キャンペーンへの不安の声は、都内で1日の新規感染者数が200人を超えた9日以降、各地で拡大。全国一律の実施を見直すよう求める首長らの声を受け、野党も政府の責任をあぶり出そうと躍起だ。立憲民主党など野党4党は15日の国対委員長会談で、延期を求める方針で一致した。
 自民党内でも異論が出始めた。「既に旅行を予約した人もおり、予定を変えれば大混乱だ」(閣僚経験者)との声がある一方、別の閣僚経験者は「やったらやったで大混乱。責任は誰が取るのか」と懸念を隠さない。首相に近い党幹部は「朝令暮改でもいいから、ちゅうちょせず変更したらいい」と、実施方法の見直しを唱える。
 だが、Go Toキャンペーンは経済のV字回復を目指す安倍政権の看板政策だ。新型コロナ対策はこれまでも迷走ぶりが批判を招いており、新たな方針転換は政権基盤をさらに弱体化させかねない。菅氏は15日の記者会見で「各自治体の中にさまざまな意見があることは承知している」と認める一方、「観光や飲食の業界からは期待する声が寄せられている」と強調、予定通りの実施が望ましいとの立場をにじませた。
 また、菅氏は16日に新型コロナ対策を議論する分科会で専門家の意見を聴くと説明した。政府関係者は、厚生労働省の専門家組織の意見として「今のところやめる理由はないという感じだった」と指摘しており、予定通りの実施に「お墨付き」を得たい考えとみられるが、菅氏は「各地の感染状況を注視しつつ、専門家の意見を聴きながら適切に運用していきたい」と歯切れが悪かった。(2020/07/16-07:10)

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