コロナ対策に罰則必要? 「ムード便乗危険」―私権制約に慎重論・識者ら

2021.01.18
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by 時事通信

 新型コロナウイルス対策に実効性を持たせるとして、政府が休業要請や入院勧告に応じない場合の罰則導入を検討している。感染拡大が続く現状から「やむを得ない」との意見も強いが、私権の制約に対し専門家からは「ムードに流されず、合理的な根拠が必要だ」という声が上がる。
 浮上しているのは、入院を拒否した感染者への懲役・罰金や、休業や営業時間短縮の要請に応じない事業者への過料などの規定。現在は協力の要請にとどまり、応じない場合の対応は店名公表など限定的だ。悪質なルール違反には警察が対応しており、持続化給付金の不正受給や、感染を隠した入浴施設利用などで逮捕事例がある。
 経済界や全国知事会が罰則導入を求める一方で、日本医学会連合は「国民の協力を得にくくなり、罰則を恐れて検査を受けなくなる可能性もある」とする反対声明を出した。
 元東京地検公安部長の若狭勝弁護士は「現行法では、入院しないといった消極的な行動を取り締まるのは難しい」と法改正には理解を示す。ただ、「罰則を設けるには相当の合理性や必要性がないといけない。罰則がないと感染防止できない根拠や専門家の見解が必要で、政治判断だけでは決められない」として、拙速な議論を慎むよう求めた。
 「不安が高まっていると過剰な対応に流されやすい」と危惧するのは、関西大の高作正博教授(憲法)。経済活動や行動の自由は憲法が保障しており、「権利の制限は、必要不可欠な場合に最小限が大原則。『緊急事態だ』と押し切れば、制定だけでなく法を適用する場合にも憲法違反の恐れが出てくる」とくぎを刺す。
 「国家が強い対応を取れば、社会の目も厳しくなる。それは良いことばかりでない」とも指摘。「悪いのはウイルスなのに、『自粛警察』のような店への嫌がらせや、感染者への差別を正当化するムードが生まれないか不安だ」と懸念した。(2021/01/18-07:02)

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