震災前、原発事故は想定せず 菅直人元首相インタビュー

2021.02.28
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by 時事通信


インタビューで東日本大震災発生時を振り返る立憲民主党の菅直人元首相=25日、衆院議員会館

インタビューで東日本大震災発生時を振り返る立憲民主党の菅直人元首相=25日、衆院議員会館

 東日本大震災から10年を迎えるのを前に、立憲民主党の元首相は27日までに時事通信のインタビューに応じた。菅氏は震災前、原発事故を想定していなかったと振り返り、「間違っていた」と指摘。危機管理は最悪の場合を想定することが必要と強調した。(肩書は当時)
 ―当時の対応を振り返って。
 東京電力福島第1原発事故の問題では、東電や、当時の原子力安全・保安院、原子力安全委員会から的確な情報が来なかったことが一番問題だった。
 ―震災翌日に福島第1原発に行ったことには批判もあった。
 東電が(原子炉格納容器の破損防止のため内部の圧力を下げる排気作業)「ベント」をしたいと言ってきた。しかし、何時間たってもベントが行われたという報告が来ない。東電から官邸に派遣されていた武黒一郎フェローに理由を聞いても「分からない」と言う。私はこのままでは状況がつかめないと思ったから行った。そこで初めて吉田昌郎第1原発所長と会い、「決死隊をつくってでもやる」と言われた。吉田氏に会えたことは、その後の対応にとって、非常に有意義だった。
 ―2011年3月15日に東電本店に乗り込んだ。
 東電の清水正孝社長から経済産業相らに事故現場から撤退したいとの申し出があった。私は清水氏を呼び「撤退はない」と伝え、政府と東電の統合対策本部を東電本店内に置いた。そこからやっと東電の情報がスムーズに入り始めた。
 ―原発事故の直後、天皇在位中の上皇さまらに東京からの避難を打診したか。
 頭の中では考えていたが、私が直接宮内庁に打診したことや、誰かに指示したことはない。閣僚や官僚らが独自にやったかもしれないが。
 ―復興状況の評価は。
 インフラ整備はかなり進んだ。しかし、避難した人たちが戻るには仕事が必要で、ソフト面の充実が重要だ。
 ―福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水や廃炉について。
 処理水の海洋放出は風評被害の懸念があり、慎重に対応することが必要だ。廃炉作業は20~30年でどうなる問題ではなく、もっと長い時間がかかることを覚悟した中で進めていく必要がある。
 ―首相の新型コロナウイルス対応をどう見ているか。
 私は事故が拡大して最悪の場合どうなるかを想定して、そうならないためにどうするかを考えた。菅首相は、最悪の状態を想定して対応できていない。
 ―震災を政治人生でどう位置付けているか。
 事故発生初期に避難の過程でお年寄りや病気の方が大勢亡くなったことは非常に責任を感じている。震災前は、私も原発事故は起きないと考えていたが間違っていた。原発はゼロにすべきだ。(2021/02/28-07:39)

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