元自衛官に無期懲役 2人殺害交番襲撃―強盗殺人罪認めず・富山地裁

2021.03.05
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by 時事通信

 富山市の交番で2018年6月、警察官が刺殺され、奪われた拳銃で小学校の警備員が射殺された事件で、強盗殺人罪などに問われた元自衛官、島津慧大被告(24)の裁判員裁判の判決が5日、富山地裁であった。大村泰平裁判長は「殺害後に拳銃を取る意思が生じた可能性を排斥できない」として、警察官への強盗殺人罪の成立を認めず殺人罪などを適用し、無期懲役(求刑死刑)を言い渡した。
 強盗殺人罪の成否と量刑が主な争点だった。検察側は、当初から銃の奪取を考えており強盗殺人罪が成立すると主張。弁護側は、警察官が倒れた後に拳銃を奪う意思が生じたとして、殺人と窃盗の罪にとどまると訴えていた。
 大村裁判長は、警察官と闘うと考えてから実行するまでの時間は1時間に満たず、襲撃後の計画を立てていたことを示す証拠もないと指摘。襲撃後の行動も「半ば行き当たりばったりと言える」と述べ、計画性があったとは言えないと判断した。
 被告の「武器を奪う目的もあった」という趣旨の捜査段階の供述は、「犯行当時の内心を正確に表現したものか、疑問がある」と述べた。
 その上で、「強固な殺意に基づいた残忍かつ冷酷なものだ。人命軽視の程度が大きい」と犯行を非難した。一方、被告の自閉症スペクトラム障害が犯行や動機形成に与えた影響を認定し、死刑が選択された他の事件と同程度にまで重大とは評価できないと結論付けた。
 島津被告は法廷では黙秘し、公判を通じて一言も話さなかった。
 判決によると、島津被告は18年6月26日、富山県警富山中央署奥田交番で所長の稲泉健一警視(2階級特進)=当時(46)=を刺殺し、拳銃を窃取。近くの小学校の正門付近で警備員の中村信一さん=同(68)=を射殺するなどした。
 西岡剛・富山地検次席検事の話 判決内容を精査し、上級庁などと協議した上で対応を検討したい。(2021/03/05-18:36)

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