「見えない恐怖、偏見に」 差別体験、コロナと重ね―ハンセン病元患者聖火ランナー

2021.04.19
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by 時事通信


入所する国立療養所「大島青松園」で取材に応じるハンセン病元患者の松本常二さん=2020年1月、高松市

入所する国立療養所「大島青松園」で取材に応じるハンセン病元患者の松本常二さん=2020年1月、高松市

  • 東京五輪の聖火ランナーとして車いすで走ったハンセン病元患者の松本常二さん=18日午後、高松市(代表撮影)
  • 東京五輪の聖火ランナーとして車いすで走ったハンセン病元患者の松本常二さん=18日午後、高松市(代表撮影)

 ハンセン病の元患者、松本常二さん(89)が18日、東京五輪の聖火ランナーとして車いすで高松市内を走った。ハンセン病と新型コロナウイルスを重ね合わせ、目に見えない感染症への恐怖が生む偏見を危ぶむ松本さんは、走る姿を見てもらったことで「偏見や差別が一つでも減ったら」と願う。
 小学5年生の時にハンセン病の兆候が表れ、国立療養所「大島青松園」(同市)に入所した。病気が分かると音信不通になった同級生もいた。「らい予防法」(1996年廃止)による隔離政策のため外出できず、64年の東京五輪はラジオで聞いた。「非常に劣悪な差別を受けて生きてきた」と振り返る。
 コロナ禍について、「見えないものにみんな恐怖を感じる。どこかですれ違って感染するかもと。それが偏見や差別につながる」と自身の体験と重ねる。
 ランナーに選ばれたことを「非常に貴いこと」と感じ、ハンセン病への偏見や差別が薄れてきたと感じている。元患者には戸籍や本名を捨てた人も多く、松本さんも療養所で偽名を使ってきたが、リレーには本名で参加した。
 感染拡大により五輪開催を危ぶむ声も上がる状況だが、「平たんな道を走るだけじゃなく、山あり谷ありのところから平和の祭典が行われることが必要。難問を切り抜け、支え合い協力して開催することで世界が開ける」と期待している。
 病気の後遺症で視力を失ったが、並走する療養所職員と共にトーチを持って走り切った。出走を終え、「生涯ただ一つの大きなイベントに参加できたことをうれしく思う。(聖火は)世界につながる道。みんな思いは一つだと信じている」と力強く語った。(2021/04/19-07:02)

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