日本の難民制度、国連も問題視 入管法改正、手続き中送還可能に

2021.05.17
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by 時事通信


東日本入国管理センター=茨城県牛久市

東日本入国管理センター=茨城県牛久市

 外国人の収容・送還に関する制度を見直す入管難民法改正案。難民認定の手続き中は強制送還が停止される従来の仕組みに例外を設け、3回目以降の申請では国外退去処分を可能にすることが柱だ。国会で与野党の対決案件となり、「国際基準」に反するとして国連機関も問題視している。
 複数回申請者は、就労資格取得に道が開けた2010年ごろから増え、ピークの17年は1563人。就労認定が厳格化された18年以降は減ったが、出入国在留管理庁によると昨年は3回目以上の申請者が25.8%を占めた。
 現行法には難民申請の回数や理由に関係なく、審査中は一律に送還されない「送還停止効」と呼ばれるルールが規定されている。ただ、これを逆手に取り、申請を繰り返すことで強制送還を免れるケースがあるとされる。また、重大事件の容疑者やテロリストが日本に残る懸念が生じている。
 政府は母国の情勢などに問題がなければ3回目以降の申請から送還できるようにする改正案を2月に閣議決定し、国会に提出。法相は「(2度の機会で)審査は十分尽くされたものと考えられる」と説明している。
 ところが、名古屋市の出入国管理施設に収容された30代のスリランカ人女性が死亡する事案が3月に発生。改正案が注目を集めた。
 難民保護に当たる国連難民高等弁務官事務所(UNHCR、本部・スイス・ジュネーブ)は4月、送還停止効の例外規定について、難民条約に違反する恐れがあるとして「重大な懸念」を表明。今月14日には日弁連が改めて反対する声明を出した。立憲民主党なども削除を主張している。
 改正案に関しては、日本の難民認定率の低さがそもそもの問題として指摘される。16~19年の申請者は毎年1万人超に上るが、認められたのは年間20~44人だ。
 難民認定の国際標準であるUNHCR作成の「難民認定基準ハンドブック」には「疑わしきは申請者の利益に」との原則が明記されている。証拠で裏付けできなくても、申請者の供述は事実だと推定する考え方だ。
 改正案に反対する中央大の北村泰三教授(国際人権法)は「十中八九、命が危ないと客観的に証明されなければいけないのがわが国の難民認定基準だ」と解説。「(ハンドブックと比べ)非常に厳しい」と疑問を呈している。(2021/05/17-06:53)

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