勝利の花、準備着々 コロナ打撃、福島・浪江町の農家―東京五輪1カ月前

2021.06.24
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by 時事通信


東京五輪に向けた出荷の準備で、仲間のビニールハウスのトルコギキョウを手入れする清水裕香里さん=21日午前、福島県浪江町

東京五輪に向けた出荷の準備で、仲間のビニールハウスのトルコギキョウを手入れする清水裕香里さん=21日午前、福島県浪江町

 東京五輪まで1カ月。メダリストの表彰で贈られる花束「ビクトリーブーケ」は、東日本大震災の被災地で生産された花々が使われる。福島県浪江町で震災後に花卉(かき)栽培を始めた農家は「いつでも注文を受けられるように準備している。選手が掲げるのを見るのが楽しみ」と話す。
 ブーケに使われる福島県産花の一つ、トルコギキョウを栽培するのは、東京電力福島第1原発事故で避難指示が出ていた浪江町のNPO法人「Jin」だ。もともと福祉事業を手掛けていたが、2013年に町内への日中の立ち入りが可能になり、農業を始めた。
 風評被害の影響を比較的受けにくいことなどから、県や町に勧められ、14年から花の栽培を開始。順調に売り上げ、20年の五輪に向けて準備を進めていたさなか、新型コロナウイルス禍が直撃した。
 五輪は延期、イベントも軒並み中止された影響で、昨年の出荷額は大幅に減少。それでも同法人代表の清水裕香里さん(55)は「ピンチの裏にはチャンスがあると思って行動してきた」。出荷方法をイベント用から個人の観賞用に切り替えるなど工夫し、この1年を乗り切った。
 花の色や大きさ、枝の長さなどがブーケの規格に合うよう育て、大会期間に花開くよう、時期をずらして苗を植える。清水さんは「ブーケに関心を持ち、浪江町で花卉(かき)農家になる人が増え、町全体の復興につながれば」と話す。(2021/06/24-07:32)

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