「黒い雨」訴訟、国が上告せず 菅首相表明、住民勝訴確定へ

2021.07.26
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by 時事通信


「黒い雨」訴訟の広島高裁判決について上告見送り方針を表明する菅義偉首相=26日午後、首相官邸

「黒い雨」訴訟の広島高裁判決について上告見送り方針を表明する菅義偉首相=26日午後、首相官邸

  • 「黒い雨」訴訟で上告見送りを表明した後、湯崎英彦広島県知事(左)、松井一実広島市長(中央)と面会する菅義偉首相=26日、首相官邸

 原爆投下直後に降った「」を浴びて健康被害を受けたとして、広島県内の男女84人が被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟で、政府は26日、原告全員を被爆者と認めた広島高裁判決について、上告を見送ることを決めた。首相が同日、首相官邸で記者団の取材に明らかにした。住民側の全面勝訴が確定する。
 首相は「直ちに原告の皆さんに被爆者手帳を交付したい」と強調し、「同じような事情の方についても救済を検討したい」と述べた。一方、「(判決には)政府として受け入れ難い部分もある」とも話し、近く談話を発表する考えを示した。
 上告期限は28日で、首相は見送りを表明後、湯崎英彦広島県知事、松井一実広島市長と面会、判決を受け入れる意向を伝えた。上告断念を求めていた湯崎知事は「被爆者の長年にわたる痛み、不安、苦しみに思いを寄せた判断」と評価した。
 国は、が1時間以上降り続いたとされる「大雨地域」を、被爆者援護法に基づく援護対象区域に指定。区域内に住んでいた住民は無料で健康診断を受けられ、がんなどにかかれば手帳を交付され、医療費負担が免除される。
 原告らは原爆投下時、対象区域の外側で暮らしており、県や市に手帳の交付申請を却下され、広島地裁に提訴。地裁は昨年7月、は「大雨地域」より広い範囲で降ったと判断し、原告全員を被爆者と認めた。
 県と市は、裁判に補助参加した国の方針に従って控訴したが、今月14日の広島高裁判決は一審同様、全員を被爆者と認定した上で、認定要件を緩和。原爆との関連が想定される疾病を発症していなくても被爆者と認める判断を示した。(2021/07/26-20:27)

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