益川敏英さん死去 ノーベル物理学賞、81歳

2021.07.29
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by 時事通信


ノーベル賞授賞式を終え、メダルを手にする物理学賞の益川敏英さん(中央)、小林誠さん(左)、化学賞の下村脩さん=2008年12月10日、ストックホルム

ノーベル賞授賞式を終え、メダルを手にする物理学賞の益川敏英さん(中央)、小林誠さん(左)、化学賞の下村脩さん=2008年12月10日、ストックホルム

  • 益川敏英さん

 素粒子物理学の分野で、宇宙誕生の謎を解明する先駆的な理論を提唱し、2008年のノーベル物理学賞を受賞した京都大名誉教授の益川敏英(ますかわ・としひで)さんが23日午前8時40分、上顎歯肉がんのため、京都市内の自宅で死去した。81歳だった。葬儀は家族で済ませた。
 1940年、名古屋市生まれ。名古屋大大学院修了後、同大助手、東京大助教授などを経て、80年京都大教授。03年名誉教授、京都産業大教授、09年名古屋大特別教授。
 宇宙が138億年前にビッグバンで誕生した際、現在ある物質と、電気のプラスとマイナスに加え空間の左右も逆の「反物質」が同じだけできたのに、現在は物質しか残っていない。
 益川さんは、物質の最小単位である素粒子のクォークが3種類しか見つかっていなかった73年、6種類存在すると予言。高エネルギー加速器研究機構特別栄誉教授の小林誠さん(77)と共に、6種類存在すれば反物質が消えたことが説明できるとする「小林・益川理論」を提唱した。
 94年までに残り3種類が発見され、益川さんは小林さん、米シカゴ大名誉教授南部陽一郎さん(15年死去)と共に08年のノーベル物理学賞を受賞した。
 飾らない人柄で知られた。「英語は苦手」と公言し、受賞講演をすべて日本語で行った。
 幼い頃、戦災に遭った経験から平和への思いはひときわ強く、近年は核兵器廃絶を目指すパグウォッシュ会議に出席したり、集団的自衛権行使を認める安全保障関連法の違憲訴訟に原告として加わったりした。
 京産大によると、昨年12月ごろから体調を崩し、自宅で療養していたという。(2021/07/29-21:15)

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