入院制限、与党が「撤回」要求 コロナ第5波拡大、政府は対応に苦慮
政府が打ち出した新型コロナウイルス感染者の入院制限方針について、自民、公明両党から4日、撤回の要求が上がった。全国的に「第5波」到来が鮮明となる中、政府は病床逼迫(ひっぱく)を回避するため自治体と連携して入院の絞り込みに理解を求める考えだが、与党から異論が相次いだことで対応に苦慮しそうだ。
菅義偉首相は4日夜、首相官邸で記者団に、入院制限の政府方針に関し、「丁寧に説明し、理解してもらいたい」と強調した。
自民党は4日、新型コロナ対策本部などの合同会議を開催。入院対象を重症者や重症化リスクの高い患者に制限し、それ以外は自宅療養を基本とする政府方針の撤回を求めることで一致した。会議後、古川俊治参院議員は記者団に「党に一切相談なく首相官邸で決めたことだ」と不満をにじませ、白紙撤回を訴えた。
これに先立つ衆院厚生労働委員会の閉会中審査で、公明党の高木美智代政調会長代理は「酸素吸入が必要な中等症患者を自宅で診るなんてあり得ない。撤回を含め検討し直してほしい」と政府に迫った。
野党も攻勢を強めた。立憲民主、共産、国民民主3党は4日、国対委員長会談で方針撤回の必要性で一致。立民の長妻昭元厚労相は国会内で田村憲久厚労相に会い、「やむを得ざる場合は総力を挙げて宿泊施設を確保してもらいたい」と要望した。
一方で、第5波の勢いはなお止まらない。東京都の新規感染者数は4日、過去最高を更新。国内でもこれまでの最多を上回った。3日時点の内閣官房資料では、重症者向けに確保した病床使用率は東京都で7割超になり、首都圏などでも上昇しつつある。
田村厚労相は4日の厚労省専門家会合で、感染力の強いデルタ株の影響などを踏まえ「今までにない新規感染者の伸びをしていることは本当に危惧している」と力説。「国民の健康を守るため、先手の対応をする必要がある」と理解を求めた。(2021/08/04-21:06)