変則軌道、低高度で突破意図か 北朝鮮弾道ミサイル発射―防衛省警戒

2021.09.16
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by 時事通信


北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて、臨時の記者会見をする岸信夫防衛相(左から3人目)=15日夜、防衛省

北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて、臨時の記者会見をする岸信夫防衛相(左から3人目)=15日夜、防衛省

  • 海上自衛隊のイージス艦「きりしま」の迎撃ミサイルSM3発射試験=2010年10月、米ハワイ沖(米海軍提供)
  • 記者会見で北朝鮮が15日に発射した変則軌道の弾道ミサイルについて見解を述べる自衛隊制服組トップの山崎幸二統合幕僚長=16日午後、防衛省

 北朝鮮が15日に発射した弾道ミサイルは、最高高度約50キロの変則軌道で飛行し、石川県・能登半島沖にある舳倉島北方の日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられる。
 放物線を描く通常の弾道ミサイルより、低空でしかも変則的な軌道で飛行するため迎撃するのは困難だ。防衛省幹部は「日米のミサイル防衛網突破を意図しているのは明らか」と警戒する。
 「分析を進める中で、変則軌道で飛行したことが判明し、EEZ内に落下したと推定される」。低高度で変則軌道のミサイルの追尾がいかに難しいかは、岸信夫防衛相の15日の臨時会見の言葉に凝縮されていた。日米韓が発射直後の情報で軌道を計算し、落下地点をEEZ外と推定したものの、変則軌道だったため修正を迫られたとみられる。
 日本のミサイル防衛は、探知した弾道ミサイルの軌道を計算、予測して迎撃ミサイル「SM3」を発射するイージス艦と、同艦が撃ち漏らしたミサイルを地上で迎撃する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の二段構えを取る。
 イージス艦で迎撃する場合、放物線を描く従来型の弾道ミサイルであれば、ミサイルが最も高度が高い軌道の頂上に達し、速度が遅くなった段階での迎撃を想定しており、軌道も予測しやすい。
 しかし、変則軌道の場合は飛行の最終段階で浮上するタイプもあり、迎撃ポイントの計算が難しい。今回の弾道ミサイルは最高高度約50キロと、SM3が想定している迎撃高度よりかなり低い。
 自衛隊制服組トップの山崎幸二統合幕僚長は16日の記者会見で、変則軌道について「非常に注視している」と懸念。一般論と前置きした上で、「通常の放物線を描く弾道とは全く異なり、(対処には)高度なレーダー能力が必要になる。総合的なミサイル防空能力の強化にさらに取り組む」と述べた。
 防衛省によると、北朝鮮が2019年5月以降、発射した弾道ミサイルの大半が高度100キロ未満(推定)で、北朝鮮が保有しているスカッドの軌道よりも低く、レーダーで探知されにくい高度も意識しているとみられる。
 北朝鮮のミサイル能力がより向上し、巨額の迎撃システムを構築しても限界があるとの見方もある。今回のミサイル発射で、自民党内で敵基地攻撃能力の保有をめぐる議論がより活発化する可能性もある。(2021/09/16-18:47)

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