動きだす「持続可能な農業」 データ活用し環境負荷軽減

2022.01.16
0
by 時事通信


稲刈り体験で指導する横田修一さん(左、本人提供)

稲刈り体験で指導する横田修一さん(左、本人提供)

  • 品種ごとの苗の使用可能数や植えた苗の数と面積などを記録した横田さんのデータ表=2021年11月30日、茨城県龍ケ崎市
  • 育てた稲を手にする佐藤拓郎さん(本人提供)

 地球環境に優しい農業への転換が各地で始まっている。政府も昨年策定した食料戦略の中で、2050年までに化学農薬の使用量を半減、化学肥料は30%減とする目標を掲げる。持続可能な農業の実現へ、データやITを活用した効率化で環境負荷軽減に取り組む農家が増えてきた。
 「苗をいつ、どのくらいの量を植えたというデータの積み重ねが農作業を効率化する」。茨城県で米農家を営む横田修一さん(45)は、データによる可視化で無駄な苗や肥料を無くすことができると話す。
 地球温暖化で気温や湿度が上昇して病気や害虫の発生が増える中、「農薬や化学肥料を一切使わないのは非現実的」という。その上で、環境への負荷が大きい農薬や廃棄物をどこまで減らせるか。データ収集による効率化で、種苗や農薬の費用を平均の半分~3分の1まで縮小させた。
 今後は、近くの養鶏農家から調達した鶏ふんを肥料に使うなど、地域の未利用資源を生かしていく考え。横田さんは「事業を存続させるためには、農業も持続的な形にする必要がある」と語る。
 一方、有機農法に取り組む青森県の佐藤拓郎さん(40)は、農作物の付加価値向上を目指し、福島県会津地方の農法を科学的に可視化した有機化学理論に着目した。
 そのためには「何より土作りが重要。田植えをする前にどれだけ雑草の発生を抑えられるかだ」と佐藤さん。詳細な土壌データを診断して必要な堆肥を割り出し、病害虫に強い土作りに挑戦している。土の温度管理も、生産工程を畑ごとに管理するアプリを使って徹底。手がかかるイメージの有機農法だが、ITで手間を軽減できるという。
 もっとも、ヘリコプターで農薬を散布すれば20メートル程度飛散するなど、持続可能な農業の実現には地域全体の意識変革が必要。佐藤さんは「地域が目指す未来へ自分たちはどんな農業をすべきか、考えることが重要だ」と語った。(2022/01/16-07:07)

print

人気のオススメ記事