首長も悩むSNS利用 情報発信に有効、中傷被害も

2022.05.16
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by 時事通信


【図解】ツイッターのフォロワー数が多い知事

【図解】ツイッターのフォロワー数が多い知事

 個人で気軽に情報発信できるインターネット交流サイト(SNS)の意義が、首長らの間で問い直されている。きっかけは神戸市の久元喜造市長がツイッターのアカウントを閉鎖したこと。SNSは強い発信力が魅力だが、匿名の利用者からの誹謗(ひぼう)中傷が絶えないもろ刃の剣で、専門家は「政治家も含め、人格を守る対策を講じてほしい」と訴える。
 「事実無根、あるいは歪曲(わいきょく)された書き込みに悩んできました。もう限界です」―。4月27日夜、久元氏はこうつぶやき、その後、アカウントを削除した。また、「言論の自由」を重んじる実業家イーロン・マスク氏が米ツイッター社を買収すれば「状況はさらに悪くなるでしょう」とし、不適切な投稿への規制が緩められる可能性に懸念を示した。
 久元氏のツイッターのフォロワーは約3万人。5月11日の記者会見では「メリットを上回るデメリットがあった。相当迷ったが思い切ってやめることにした」と説明。今後は、市民の意見をくみ上げる方策を別途検討する。
 これに対し、全国の首長からは共感する声が相次いだ。フォロワーが約127万人(13日時点)の吉村洋文大阪府知事は12日の会見で「SNS上は言いたい放題。気持ちはよく分かる」と同調。ただ「政治家としての考えを発信する有効な手段だ」とも述べ、自身は続ける方針だ。
 フォロワー数約28万人(同)の熊谷俊人千葉県知事も「中傷でストレスがあるのは事実。利用者のモラルにかかっている」と強調した。
 独自のガイドラインを示す首長もいる。フォロワーが約17万人(同)いる大西一史熊本市長は自身のホームページに「匿名だからこそ、対面で話す以上に言葉遣いは丁寧であるべきだ」などと掲載。「予告なくコメント削除やブロック(閲覧拒否)などを行うことがある」と警告している。
 SNS問題に詳しい国際大学の山口真一准教授は「公人相手でも批判と誹謗中傷を区別するのは大前提だ」とした上で、ブロック機能のほかに、行き過ぎた投稿を非表示にする「ミュート機能」なども提案。「どんな立場の人でもSNSを活用する権利がある」と助言している。(2022/05/16-07:05)

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