対北朝鮮、ミサイル防衛急務 米CSISチャ氏―バイデン大統領歴訪

2022.05.20
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by 時事通信


ビクター・チャ 米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長(CSIS提供)

ビクター・チャ 米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長(CSIS提供)

 【ワシントン時事】バイデン米大統領の日韓歴訪について、朝鮮半島問題の専門家で米戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長のビクター・チャ氏に聞いた。
 ―韓国で新政権が発足した。
 尹錫悦大統領はミサイル防衛強化や日本との関係改善に前向きだ。韓国は統一地方選、日本は参院選を控えるが、その後は早期の日韓首脳会談を模索すべきだ。韓国は半導体や電気自動車(EV)関連で強みがあり、日米豪印の枠組み「クアッド」にも貢献できる。
 ―ロシアのウクライナ侵攻が北朝鮮問題に与えた影響は。
 ウクライナが核兵器を放棄して侵攻されたことを教訓に、北朝鮮は核兵器を維持するだろう。より深刻なのは、ロシアのプーチン大統領に倣い、核の「先制使用」を宣言して他国の介入を防ごうとすることだ。
 ―「核の傘」を含む米国の拡大抑止は有効か。
 同盟国の日韓には有効だ。バイデン氏訪問時の重要な論点になる。各国が深刻に考えていることを示すジェスチャーや合意が必要だ。
 ―北朝鮮の核実験が取り沙汰されている。
 制裁を強化しようにも国連安保理で中国とロシアが反対する。日米韓3カ国はミサイル防衛協力を急ぐべきだ。韓国への迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備は対中関係や費用面で議論がある。通常の米韓軍事演習の再開は有意義だ。
 ―北朝鮮の後ろ盾となる中ロへの二次制裁の可能性は。
 北朝鮮には既に多くの制裁を科しており、中ロに圧力をかける二次制裁は次の段階として理にかなっている。中ロは北朝鮮のミサイル開発に必要な機材調達を支援している。金融機関や企業、洋上で物資を積み替える「瀬取り」が制裁対象として考えられる。
 ―北朝鮮は米国との交渉に応じていない。
 新型コロナウイルスの流行で中国との貿易を断っても、厳しい制裁を科されても、核・ミサイル開発は続けている。交渉は必要だが少なくとも今年中は応じないだろう。この間に長・短距離ミサイル、戦術核などあらゆる種類の核・ミサイル開発を達成しようとするだろう。だからこそ日米韓の連携強化が急務だ。(2022/05/20-07:08)

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