所得制限撤廃、岸田首相の判断が焦点 与野党要求、政権に慎重論も―児童手当

2023.02.04
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by 時事通信


首相官邸に入る岸田文雄首相=3日午前、東京・永田町

首相官邸に入る岸田文雄首相=3日午前、東京・永田町

 首相は児童手当の拡充に向けた検討を急ぐ。所得制限撤廃の是非が課題の一つ。与野党幹部が撤廃を主張するが、政権内に慎重論が残る。3月末に予定する「異次元の少子化対策」のたたき台取りまとめに向け、首相の判断が焦点となる。
 首相は3日、自民党の幹事長と首相官邸で45分間、会談した。茂木氏は1月25日の衆院代表質問で児童手当の所得制限を撤廃するよう主張した。会談ではこの扱いも含めて意見を交わした可能性がある。
 首相は代表質問で制限撤廃論について「国会の議論も踏まえ検討を進める」と明言を避けた。こども政策担当相も3日の衆院予算委員会で、児童手当拡充に関し「所得と年齢要件の在り方、多子世帯支援を論点として議論していく」と答弁し、踏み込まなかった。
 現行の児童手当は中学生まで月1万~1万5000円、所得制限を超えると月5000円を原則支給。一定以上の高額所得者は対象外だ。
 自民党は旧民主党政権が掲げた、所得制限なしの「子ども手当」を批判し、制限は必要との立場だった。茂木氏の主張は従来の党方針を転換するものだが、党内調整はこれからだ。
 児童手当を巡り、公明党も所得制限撤廃を求める。4月の統一地方選の重点政策に、高校生への対象拡大、増額とともに盛り込んだ。自公両党幹部は「撤廃の方向に進むだろう」と口をそろえた。立憲民主、日本維新の会など6野党は、2日の与野党国対委員長会談で、与党に撤廃実現を迫った。
 与野党幹部が所得制限の撤廃を唱えるのは、統一選や衆院補欠選挙をにらんだ動きだ。ただ、政府・自民党内には富裕層への支給につながることから慎重論も根強い。西経済産業相は3日の記者会見で、「所得の高い方を支援するよりも、厳しい状況にある所得の低い方への支援を拡充すべきだ」と重ねて訴えた。
 首相周辺は「高所得者に手当が要るのかどうか。世論の反応を見極めるのが大事だ」と指摘した。党関係者によると、首相は「撤廃に使うお金でもっと充実したことができる」と述べ、現段階で制限の完全撤廃には慎重な姿勢も見せている。(2023/02/04-07:25)

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