ホームレス動画、SNSで拡散 無断撮影、からかう内容も―支援者「エスカレート懸念」

2023.03.26
0
by 時事通信


炊き出しに並ぶ人たち=2月16日、名古屋市中区

炊き出しに並ぶ人たち=2月16日、名古屋市中区

  • 炊き出しに並ぶ人と話す「野宿者を支援する会」代表の東岡牧さん(中央)=2月16日、名古屋市中区

 名古屋市のコンビニでホームレスの女性が嫌がらせを受ける動画がSNSで拡散され、愛知県警は2月、店舗への建造物侵入容疑で、10代の少女ら2人を書類送検した。ホームレスを撮影した動画などは近年、SNSに多く出回り、中には無断で撮ったり、からかったりするものもある。支援者は「弱者を笑いものにしている」と批判し、襲撃事件などにエスカレートしないか懸念している。
 「ちょっと待って。ちょっと」。少女らが撮影したとされる動画には、好きな物をおごると言われ、買い物かごに商品を入れたホームレスの女性が、レジの前で置き去りにされて困惑する様子が映っていた。
 動画は1月にSNSに投稿され、「いじめだ」などと批判の声も上がっていた。捜査関係者によると、少女らは容疑を認め、「自分のSNSをバズらせ(話題にさせ)たかった。バズればフォロワーが増えると思った」などと供述したという。
 ホームレスが動画出演を依頼されるケースは少なくない。名古屋市の男性(60)は昨年9~10月、若者数人に声を掛けられ、計7本の動画に出演した。「ハロウィーンの日に女装して街を歩けばお金を渡す」と言われ、露出の多い服を着させられたこともあったという。
 「野宿者を支援する会」(同市)代表の東岡牧さん(59)はこうした動画について、「弱い立場の人を笑いものにしており、差別だ」と非難する。支援するホームレスの中にも出演を依頼された人がおり、安易に応じないよう呼び掛けている。
 生活困窮者に住宅支援をする一般社団法人「つくろい東京ファンド」(東京)新規事業部長の佐々木大志郎さん(44)によると、1~2年前からホームレスの生活に密着した動画がSNSで注目され、無断撮影など問題のある動画も増えたという。
 過去にはホームレスが少年らに襲われ、死亡する事件も発生している。佐々木さんは動画撮影が襲撃事件などにエスカレートしないか懸念し、「ホームレスと関わりたいのであれば、カメラ越しのコンテンツとしてではなく、人として関係を築くことから始めてほしい」と訴えている。(2023/03/26-07:00)

print

人気のオススメ記事