対ロ・邦人拘束、課題多く 林外相、週末の中国訪問へ調整

2023.03.30
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by 時事通信


衆院外務委員会で答弁する林芳正外相=29日午後、国会内

衆院外務委員会で答弁する林芳正外相=29日午後、国会内

 外相が調整する今週末の中国訪問は、ロシアのウクライナ侵攻や日本人拘束事案などへの対応が課題となる。中国は東・南シナ海で覇権主義的な行動を続けている。「建設的かつ安定的な日中関係」構築に向け「主張」と「対話」の両面で成果を出せるかが問われる。
 複数の関係者によると、林氏は4月1~2日に訪中し、2日に秦剛国務委員兼外相と会談する方向。昨年11月に首相と習近平国家主席がタイで会談した際、両国が首脳を含むあらゆるレベルで緊密に対話を行うことで一致。林氏訪中の調整を本格化させた。
 中国は、ウクライナ侵攻を続けるロシアとの連携を重視する。ロシアが弱体化すれば、米国主導の対中包囲網が強まると懸念しているためで、ウクライナ支援やロシア制裁を強める欧米や日本とは距離を置く。
 林氏は中国に対し、ウクライナ侵攻は「力による一方的な現状変更」であり受け入れられないとの立場を直接伝える。核の威嚇への反対も表明する。今月拘束された50代の日本人男性の早期解放も強く求める考えだ。
 日中間の緊張緩和に向け、日本が昨年末にまとめた安全保障関連3文書を説明するとともに、中国の軍事力を背景とした海洋進出の動きには「懸念」を伝達。今後の両国間の経済協力の必要性も再確認する見通しだ。
 日本外務省幹部は「邦人解放を含め、中国側に言わなければいけないことはある」と述べ、外相訪中の意義を強調する。一方、米国と対立を続ける中国側には、林氏訪中をてこに米国の同盟国である日本を取り込む思惑があるとみられる。
 林氏は日中友好議員連盟の会長を過去に務めるなど、日本政界では「親中派」とされる。今回の訪中で具体的な結果が伴わなければ、自民党保守派内で林氏への反発も強まりかねない。自民中堅は「邦人の早期解放などの成果がなければ、林氏の立場は厳しくなる」と語った。(2023/03/30-07:10)

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