八方塞がりの状況に陥りかねないゼレンスキー
ウクライナは、現在、大統領がユダヤ系ということだけでなく、従来イスラムに対しては冷淡と言われており、もし戦火が南部からウクライナを襲ってくる事態になった時、これまでウクライナと距離を取ってきたアラブ諸国とイランに“踏み絵を迫られる”事態になるかもしれません。
ウクライナとしては、アメリカから支援を受けていることもあり、アメリカに意向を確かめなくてはならないでしょうが、イスラエルはウクライナに直接的な支援をどのような形でも行っておらず、何の恩義も感じていないことから、どのように風を読んで行動するとしても、いろいろな勢力の板挟みになることは必至で、対ロ反転攻勢の苦戦と合わせて、八方塞がりの状況に陥る可能性が高まります。
そうなってしまったら、ウクライナ国内でも意見の統一が困難になり、それが、プーチン大統領が望んだように、ゼレンスキー大統領を食いつぶしてしまうかもしれません。
これはまさに最悪のシナリオの一部と言えますが、これが実際に起こらないように防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?
残念ながら、今、特効薬は見つかりませんが、一つ言えるとしたら、安保理に集う国々は、少し変な言い方にはなりますが、「まずどの戦争を協力の上、終わらせるか」を決めて、迅速に合意し、実行に移す必要があります。
そうすることで飛び火も、延焼も免れることができるようになりますが、“どれを選ぶか”は、各国の複雑な政治的関心と事情が絡むため、とても困難な交渉を余儀なくされることになります。
まずイスラエルとハマスの問題を決着させるのか?
ロシア・ウクライナ戦争を何らかの形で(仮にロシアのプーチン大統領を利することになっても)一旦決着させるのか?
コソボにおけるセルビア系とアルバニア系勢力や、アゼルバイジャンとアルメニアに「今はおとなしくして」と懇願して、紛争の種を一旦摘むのか?
それとも…。
そもそも“国際社会”といわれる非当事国に、誰かの問題を解決する権限や力があるのでしょうか?
そしてそれはいかにして正当化できるのでしょうか?
外野でありつつ、口を出したがる非当事国は、そもそも当事国が抱く懸念や望みを本当にどこまで理解して、寄り添い、何とか懸念を払しょくし、望みをかなえる手助けをしようと本気で考えているのでしょうか?
たくさんの問いが浮かんできてしまいます。
このメルマガが皆さんのお手元に届く11月24日日本時間朝7時半ごろの時点までに、先の“合意”内容が履行され、人質が一人でも多く家族のもとに帰り、ガザの人々にほんの一瞬でも一息つく機会が与えられている状況が生まれていることを祈って。
そして4日間が過ぎた後、どうか私が描いたワーストシナリオが、ただの妄想に終わっていることを願って。
以上、今週の国際情勢の裏側でした。
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