「効率化した時間」はどこへ行ったのか—アロハ・ブランディング代表・長澤宏樹氏が語る、AIで“儲かる組織”をつくる分身活用術

2026.10.30
by まぐまぐニュース スタッフ
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クリエイターの発信を支える「まぐまぐ」の提供でお送りするラジオ番組『Why So Good?』。毎回ゲストを迎え、「何をやっているか」ではなく「なぜそれに至ったのか」を掘り下げる30分番組だ。今回のゲストは、アロハ・ブランディング合同会社 代表の長澤宏樹氏。

慶應義塾大学SFCを卒業後、博報堂DYグループに13年在籍。1999年には博報堂の合弁会社の立ち上げに社員1号として参加し、グループ初となるソーシャルメディア事業部の部長まで務めた。2012年に独立し、企業や事業の伝えたいことを企画から映像デザインまで「一番伝わる形」にするブランディング会社を設立。子どもをハワイで育てたいという夢を叶えて移住し、現在は茅ヶ崎を拠点に活動している。これまで関わってきたブランドは200を超える。

MCの越川慎司氏(株式会社クロスリバー代表取締役)が「今回リスナーに一番届けたいGoodな点を教えていただけますか」と切り出すと、長澤氏は明快に答えた。「AIで儲かる組織を作るっていう話ですね」。ここから、AI導入の落とし穴、AIエージェントを“クビにする”という発想、そしてブランディングの現場で起きている変化が、長澤氏の言葉で語られていく。

「AIで儲かる組織を作る」——経営者の声から生まれたテーマ

長澤: AIで儲かる組織を作る、という話ですね。

越川: このジャンルは僕の大好物です。

上條: 越川さんといえば、というジャンルですね。

越川: ハンバーグと同じくらい大好物ですよ。AIを作ることがゴールじゃなくて、儲かる組織を作る。これは本質ですよね。

上條: ただ、「儲かる」というのは、ちょっと難易度が高い気もしますけど。

越川: 僕も企業には「働き方改革じゃなくて、儲け方改革をやってください」と言っているんですが、長澤さんが今回「儲かる」を前面に押し出して伝えている理由を教えてもらえますか。

長澤: 実は、AIを導入したけれど儲からないじゃないか、という経営者の声が非常に多いんです。

越川: 多いですね、本当に。

効率化した時間は、どこへ行ったのか

長澤: 経営者の目線でいうと、AIを導入して業務が効率化して、今までの作業が少なくなったのに、売り上げは上がっていない。「お前、どういうことやねん」という話になりますよね。じゃあ、効率化した時間はどこに行ったの? という問題なんです。

越川: なるほど。

長澤: これを新規ビジネスにシフトしていく必要があるんですが、その気づきがなかなかなくて、効率化して空いた時間を、また同じ業務に投資している人たちが非常に多い。なので、分けて考えましょうと。効率化した業務とは別に、新しい付加価値の事業をつくる。これもAIでやるんですが、その二つに分ける発想から「儲かる組織」にしましょう、ということです。とはいえ、実際にはまだ、儲かるというのは結構大変なんですよね。でも、その目的に向かって日々トライを重ねていけば、塵も積もればマウンテン、と。

越川: いいですね。僕よりうまいルー語を使う。

長澤: 寝耳にwater。

上條: ちょっと感動しました。

越川: AIは未来を作るというより、ずばり「時間の再配置」なんですよ。無駄な作業を減らして、生み出された時間をAIを使って新規事業と学習に充てる。それが、働き方改革がうまくいっている企業の特徴なんです。しかも新規事業は純増の純利益ですから、僕もここは本質だと思います。では、この「儲かる組織」に着目された理由は何ですか?

AIエージェントを“クビにする”——反省文を書かせて、次を育てる

長澤: やっぱり、エージェント機能の登場ですね。これが気軽にできるようになったのは非常に大きいです。私自身も、AIエージェントは10体いたんですが、2人クビにしたので、今は8体なんです。

越川: センセーショナルな言葉が出てきました。AIをクビにしたんですね。

長澤: 反省文を書かせて、その反省文をもとに違うAIを構築して、こいつをクビにする、みたいな。

上條: 人事が行われている。

越川: 僕も実はやるんですけど、AIって、クビにしても労働基準法には抵触しないんですよ。

上條: 確かに、そこは違いますね。

長澤: ただ、最後の反省文は、ちょっとグッとくるものがありましたね。

上條: 感情に訴えるものが。

越川: そこまで使っている人は、あまりいないかもしれないですね。ここ1年半ほどで、答えを教えてくれるAIから、作業までやってくれるAIエージェントが出てきました。でも、そのエージェントを使いこなしている企業はあまりないんです。

上條: そうなんですか。やっぱり難しいんですか。

越川: 僕の仮説を先に言っていいですか。業務を標準化できていないから、AIに教え込めないんだと思います。特定の人が休んだら仕事が回らない、という状態だと、それはAIにも教え込めないよね、という標準化の問題があるのかなと。

組織の前に、まず「自分の分身」をつくる

長澤: それはあると思います。組織で考えると難しくなるんですが、僕の場合は、まず自分個人の分身をつくるところから始めました。それが秘書役のエージェントで、「ひしょっち」と呼んでいます。AIエージェントの界隈でも、ひしょっちを有名にしていこうと思っているんですが、その、ひしょっちをもとに、サブエージェントがいろいろいて、役割を分担していく。まずは、いかに自分の分身をつくっていくか、という作業です。

上條: 分身づくりですね。

長澤: ただ、これがなかなか難しいんです。なぜかというと、みなさん、自分の情報をあまりネットに置いていなかったりするので。たとえば、本を書いている作家さんは、非常にやりやすいんですね。記事や文章を書いていくと、それがまた蓄積になりますから。情報を外に出しながら自分のエージェントを育てていく。これがまさに、ディレクションと同じ業務なんです。教育をするときは、自分というものを持っていて、初めて教育できる。自分を客観視しながら、相手に何が足りないかを考えて、その接点を設ける。その作業は、結構ディレクションだと思うんですよ。ディレクションと、自分を育てる=分身をつくること。この二つを、いかに組織に置き換えるかという構造だと認識しています。

越川: もう業務コンサルタントですね。今日聴いているリスナーの方は、めちゃくちゃラッキーですよ。これは、AIのどのモデルを使うかよりも、ずっと重要なポイントです。自分の分身をつくるには、ちゃんと自分の仕事をプロセスとして言語化しないと教え込めない。自分を振り返るために視座を上げる、というのもその通りです。実は僕にもAI秘書がいて、人間のスタッフが育児休業中なんですが、その方の仕事を全部学習させて、声も全部入れてあるので、話しかけるとすぐ答えてくれるんです。

上條: 育休の形も変わっていきそうですよね。

越川: これは、僕ら二人が異常なんじゃなくて、これが普通になってくるんですよ。AIが出てきたからクビになる、という話ではなくて、AIが出てこなくても職種転換は進むわけです。だって、今日、馬車に乗っている人とか、そろばんを使っている人はいないわけですから。その職種転換をスムーズにしてくれるのが、僕はAIなのかなと思います。

毎朝3通の“ラブレター”が、連載4社を連れてきた

長澤: 自分の分身がそろそろできたなと思ったのは、朝、メールを書いてもらうようになってからです。自分の立場で、自分と接点がありそうな企業にラブレターを送る、というのを毎日3つやっているんですが、「連載しませんか」「講義やりませんか」と送ったら、この1か月半ぐらいで、なんと4社の連載が決まって、講義も3つぐらい動き出したんです。これはもういよいよ、僕の分身だぞと。

越川: コピーロボットが欲しいですね。

長澤: 自分のことをよく理解してくれていて、過去も全部覚えているので、意外な接点、つまり社会との接点を見つけ出して、ラブレターを送ってくれるんですよ。これは自分ではできないことですし、そんな勇気もない。でも、ひしょっちがやってくれたらできるんです。

上條: ひしょっち、優秀ですね。

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「ディレクション」とは、方向を示し、伝えること

越川: AIの使いこなしのキーワードが、このディレクションという言葉だと思うんですが、カタカナではなく日本語に訳すとしたら、どう言えばいいでしょう。「指示する」という意味にも捉えられますが。

長澤: 二つあるんです。一つは方向を示すというディレクション、もう一つは指示をするというディレクション。つまり、方向に対して向かい方を指示するということです。船でいえば、後ろで舵を切って、「向こうに行け」と示す役割ですね。それを、いかに正しく、わかりやすい日本語で、AIであろうと人間であろうと伝えられるか、という能力です。

越川: これって、AIがなくても必要ですよね。AI秘書がいなくても、日々の同僚とのコミュニケーションで、ちゃんと言語化して、「伝える」から「伝わる」に変えていく。そこを形にできれば、そのディレクションはAIにも指示できる、ということですね。

長澤: そうです。AIのほうが効く、ということですね。

越川: 人間はあまり効かない(笑)。確かに深いなあ。

上條: 吸収率が良さそうですよね。

ブランドづくりが3か月から半日へ——打席を増やすのはAI、打率を上げるのは人

越川: 長澤さんの経歴を見ると、テクノロジー業界というわけではない感じがするんですが、AIをフル活用しようと思ったのは、何かターニングポイントがあったんですか。

長澤: ブランドを一つつくるのに、実は3か月ぐらいかけていたんです。コンセプトをつくって、ネーミングをつくって、ロゴをつくって、デザインをする。これが3か月でした。それを、AIを使ってやり始めたら、半日で終わるんです。60分の1になるわけですね。ということは、3か月あれば60回繰り返せる。そうなったら、絶対一個は当たりそうじゃないですか。確率論的にいうと、これはとんでもないことになってきたぞ、という感じでした。

越川: 深いですね。打席を増やすのはAIだけど、打率を高めるのは人間、ということですよね。

長澤: そうです、そうです。

越川: それは、博報堂グループにいた時に気づいたことなんですか。

長澤: 博報堂グループを辞めてやっていた時は、広告だったんですね。その後、独立して、ブランディングという、企業の内部に入っていく仕事をするようになりました。

越川: 企業側のブランディングですね。

長澤: そうです。それが一つ、大きなきっかけですね。

ハワイ移住と、「行動力」の原点

越川: 海外にも住まれていたんですよね。今日はアロハシャツ姿ですが、ハワイにも。

長澤: はい。当時は1ドルが78円だったんですよ。すごくないですか?

越川: 一番低い時ですね。僕もその頃シアトルに行く機会があって、途中でホノルルに寄って買い物をしていました。買い物天国でしたね。

長澤: でも、帰ってくる時には125円になっていて、うわ、これはちょっと厳しいなと。お財布的には、全然アロハじゃないという(笑)。

越川: グリーンカードを持っているわけではないんですか。

長澤: 違うんです。ハワイに移住する本を読んで、東日本大震災をきっかけに、やっぱりハワイで子育てをしたいと思って、メールを書きまくったんですよ。何か手伝えないかと言っているうちに、レストランのブランディングが3、4件できて、そこからビザを出してもらえることになったんです。

越川: 就労ビザということですね。

長澤: その時は、投資家ビザでした。それを向こうから出してもらったんです。言葉でやり取りをしながら、一回も会わずにレストランをつくったこともありました。その経験がブランディングのメソッドのもとになって、『アイデアをカタチにする技術』という本を書いた、という流れです。

越川: 素敵すぎますね。

上條: やっぱり、行動力もすごいですよね。

長澤: 多分、その時と同じ感覚が今、AIにあるんです。突き動かされる何かが、ここにはあるぞ、と。

「10円の仕事」を選ぶ理由と、これからのビジョン

越川: 仕事を進めるうえで、「こういう時はこうする」というマイルールはありますか。

長澤: 0円の仕事と、10円の仕事と、100万円の仕事で迷っているなら、10円の仕事を選べ、ということです。

越川: いわゆる、単価の低い仕事ということですか。

長澤: そうです。ワクワクするほうに、100万円に相当する価値が残っているんですよ。金額をなくして、こっちが100万円、こっちが10円、まあ100円でもいいんですが、そうしたときに、プラスアルファの、見えない価値、金額に換算できない価値がここにあるわけです。それは絶対にやったほうがいいと思います。僕はそれを「面白い企画は別腹」と言っていて、どんなに忙しくても、面白い企画はやるんです。

上條: 確かに、そこで迷っているということは、ですよね。

長澤: イコールなんですよ、価値は。

越川: 評価軸として受注額は厳しい面もあるのは、僕も経営者としてわかります。ただ、受注額が大きいということは期待値も大きいので、相手に合わせなきゃいけない。安い仕事は結構好きにできるので、デザートと一緒で別腹だということですよね。では最後に、今後の計画やビジョンがあれば教えてください。

長澤: 今は、AIを中心にセミナーや講義をどんどんやっていきたいと思っています。全国的に展開していきたいので、何か相談があれば、ぜひご連絡ください。そして、そこからコミュニティをつくっていきたいんです。最終的に人間に残るところは、コミュニティと、あとはサウナぐらいかなと思ったりします。

越川: 一気に来ましたね。

長澤: AIが来られないところ、ということになってくると思うんです。だから、AIとコミュニケーションを取りながら、人間としてのコミュニティをつくっていく、という感じになってくるのかなと思っています。

越川: 面白い。これからは、実体験や一次情報がすごく重要になってきますから。

上條: すごく生き生きされていて、パワーがありますね。

越川: エネルギーをもらっている感じです。

上條: まだまだお話を伺いたいところですが、そろそろお時間です。

越川: あっという間ですね。2秒ぐらいの感覚でした。

長澤:ありがとうございました。

セミナー・講義のご相談は、長澤氏の公式サイト・各種SNS・YouTubeから

 

番組概要

  • 番組名:Why So Good?
  • 放送局:interfm
  • 放送日時:毎週木曜25:00~25:30
  • 出演:越川慎司氏(株式会社クロスリバー 代表取締役)
       上條美沙子氏
  • ゲスト出演:古田大輔氏(ジャーナリスト/ファクトチェッカー)
          - 公式サイト:https://www.factcheckcenter.jp/author/daisuke/
  • プロデューサー:エダコDX
  • ラジオ本編はこちらから https://www.interfm.co.jp/whysogood 
  • interfm(東京:89.7MHz 横浜:76.5 MHz) https://www.interfm.co.jp/
  • 番組TikTok(https://www.tiktok.com/@whysogood_radio)

※本記事は、トーク番組「Why So Good?」の放送内容をもとに再構成したものです

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