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2019年03月11日
 
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▼----------- 2019.03.11 Vol.665 ---------- ブレグジット -----------

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☆ブレグジット

・合意なき離脱は経済制裁?

英国がEUから離脱するブレグジットの期日が、3週間を切った。
ブレグジットはロンドン時間2019年3月29日23時、
ブリュッセル時間3月30日0時に行われる。

EU離脱を巡る国民投票が行われたのは2016年6月23日なので、かれこれ
2年9カ月にならんとしている。その間、英政府はEU政府と
離脱後の両者の関係についての会合を続けてきたが、今になっても、
合意なき離脱か、会合を続けるか、あるいは、ブレグジットをキャンセル
するための再投票かなどと言われている。
すんなりとは抜けさせては貰えないのだ。

メディアの論調では、EUと生きるか、さもないと死(To be or not to be)
といった問題のようで、EUを離れた後の英国は、
まるで生きる望みを断たれるかのようなのだ。

ドイツ連邦金融サービス監督庁の高官は3月7日、ブレグジットを控え、
ここ数カ月で金融機関48社が英国からドイツへの移転申請を行った
ことを明らかにした。「ブレグジットに備えた対応を始めたばかりの
企業もある」とし、移転申請が今後も続く可能性があるとの認識を示した。


またブルームバーグは、EUを離れた後の英国の食卓を以下のように描写した。
(以下に引用)

アボカドトーストやバナナのスムージーはもう食卓に上らない。
新鮮なパルメザンチーズをすりおろしてパスタにかけるおいしさも忘れよう。
代わりに、食事のたびに必ず出てくるのは牛乳とパン、
ラムチョップとたくさんの豆だ。

英国が貿易合意なしに欧州連合(EU)を離れれば、英国の食卓は
産業革命時代に近くなるだろう。英国は食料品を大きく輸入に頼っている。
農産品や食品の貿易が滞ればどうなるのか、
英国人は今では想像するのも難しいだろう。

合意なき離脱となったとしても食料輸入が完全に止まることは
まずあり得ないが、食料品店や農家は最悪の事態に備えている。
最悪の場合でも、少なくとも肉とジャガイモはたっぷりあるだろう。
しかし「1日5種類」の果物と野菜は無理だ。そして、
英国での端境期は、肉料理の付け合わせは乏しい状態が続くだろう。

「食料はあるだろうが、サプライチェーンと物流が大きな変化に
対応する必要があるだろう」と王立芸術協会の食料・農業・田園委員会の
ディレクター、スー・プリチャード氏は話す。
「多分、英国の伝統的な肉と3種類の野菜という食事に
回帰するしかないだろう」と言う。

英国の食料自給率は約60%。人々が好む食品の多くが入手不可能になる
ことも想定される。貿易のない世界で、
スーパーマーケットの棚はどうなるだろうか。

牛乳は、風呂に入れるほどある。英国では毎週、国民1人当たり
約1ガロン(約4.546リットル)の牛乳が生産されている。
卵も主に国内で供給できる。

しかし、アイルランドのバターやチェダーチーズは消えるかもしれない。
チーズ好きはフランスのブリーと
イタリアのパルメザンをあきらめなければならないだろう。

青物が少なくなり、英国で収穫できるものも特定の季節だけになりそうだ。
英国で収穫できるイチゴは国民1人当たり1年に約4ポンド
(約1.8キログラム)、ラズベリーは半ポンド、バナナは皆無だ。
アボカドトーストもメニューから消える。

エンドウ豆はたっぷりあり、ニンジンとビーツもほぼ1年中あるが、
ブロッコリーは半年間しか食べられない。トマトは特別な日だけの食材だ。

ラムは英国の畜産品の中で最大の輸出品なので、ラムチョップはいつでも
食べられる。しかしフィッシュアンドチップスになるタラは
ノルウェーかアイスランドからの輸入が多い。2015年には90%が輸入だった。
ちなみに、英国人が好む紅茶も輸入品だ。
参照:アボカドとバナナにさようなら-合意なき離脱で英の食卓はこう変わる
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-05/PNVLSG6JIJUP01


本当にこの記事のようになるのだとすれば、ブレグジットにより
英国はEUとの貿易が滞るだけでなく、
EUは世界の国々に英国に対する経済制裁を強制するつもりかのようだ。
ここまで脅されて再投票を行ったなら、
ブレグジットはキャンセルされるかも知れない。

ここまで酷くなくても、メディアの大方の論調は、
ポピュリズムに屈した英国と、その我儘を見守る大人のEUだ。
もっとも、むしろEUの方が英国を口汚く罵っているのだが。

とはいえ、上記の記事は嘘か、著しい誇張だ。
そもそも関税同盟から抜けることは、禁輸を意味するのだろうか? 
EUから抜けたからと言って、EU及び、世界の他の国々との
貿易ができなくなるわけではない。貿易合意とは、要はコストの問題で、
輸入品が割高になるだけで、なくなることはないのだ。

合意なき離脱とは、基本的には英国はEUを失い。EUは英国を失う
ということだ。英国がEU以外の世界を失うわけではなく、
EU以外の世界が英国やEUを失うわけでもない。基本的にと断るのは、
EUに留まる限り、英国は他のどの国とも貿易協定などが結べないので、
離脱後に新生英国として協定、契約の結び直しとなるからだ。

このことが示唆しているのは、最悪なのは交渉期間の延長だということだ。
この期間は、英国在住の企業も、英国と取引をしようとする企業も、
何も決められない。現状では、本当の交渉相手はEUなのだが、
EUは当然、EU抜きの交渉を認めようとはしないからだ。



・ブレグジットをキャンセル、残留すればどうなる?

フランスを含む、ほとんどのユーロ圏諸国の政府は、
EU政府の強権に辟易している。とはいえ、
通貨・金融政策を統一してから20年にもなろうとしているので、
引き返すことができないのだ。一方で、
欧州統合のもう1つの柱であった財政や年金など社会保障基金の統一に
向かっては、前に進むことを止めてしまった。
このことは、英国がブレグジットを反故にし、EUに残留しても、
得られるものは何もないことを意味している。

私のコメントを初めて読む方々もいられるだろうから、2016年6月24日に、
「MONEY VOICE」に寄稿した私のコラムから要点を引用する。
参照:イギリス国民を「EU離脱」に追い込んだ、欧州連合とECBの自業自得
https://www.mag2.com/p/money/15957

「英国人がEU離脱を望んだ3つの理由

EU離脱を望む英国人が抱く懸念を、主に英文で書かれた情報をもとに、
私が勝手に推測すると、

1、EU政府が官僚的で、必ずしも英国の国益に沿った政策を行わない
2、欧州の統合はもはや現実的ではなくなった
3、移民、難民問題

の順になる。英国人にとっては、これらの懸念が、
『景気減速、失業、給与下落、資産価値減少、格下げ』などといった、
明日からの生活を脅かすような懸念をも上回ったことになる。
順に解説しよう」


1:EU政府が官僚的

「リーマンショックが起きた時には、FRBはすでに政策金利を
3.25%ポイント引き下げており、BOEでも0.75%引き下げていた。
BOJは横ばい。ところが、ECBは何と利上げしていたのだ」

「欧州にも住宅バブルの崩壊があった。英国やアイルランド、スペイン
などだ。それで、英国は利下げしたが、
ユーロ圏のアイルランドやスペインは逆に利上げされたのだ」

「(参照図を)ご覧のように、2007年まではアイルランドの
失業率だけが5%以下と最も低かった。当時のアイルランドは
他の経済指標も良く、ユーロ圏随一の経済優等生の1つだった。
ところが、サブプライム、リーマンショック後には、
一時14.7%にまで急上昇する」

「ECBはドイツを優先し、ドイツのインフレ懸念のために利上げしたのだ」

「2005年時点で失業率が2桁台だったのはドイツだけだったが、
10年後にはドイツだけが5%以下となった。
逆効果となった残りの諸国はほとんどが2桁台。
ギリシャやスペインは今も20%を超えている」

「このグラフは、先の失業率のグラフ以上に、驚きではないだろうか?
両ショック以前に(財政)黒字なのは2カ国だけ、アイルランドと
スペインだ。PIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、
スペイン)を『醜い子』と意訳するとすれば、その昔、
両国は『白鳥』だったのだ。今は誰かに汚されて、醜く見えるだけなのだ」

「景気後退時に、税収が減ったことを理由に緊縮財政を行うことは、
例えれば、震災で税収が減ったところに、復興予算を組む代わりに、
予算を取り上げ、公務員を削減するようなものだ。

こういった驚くべきことがユーロ圏では実際に行われ、挙句に
PIIGS諸国はドイツのお荷物だと揶揄された。このことは、
ユーロ圏各国には、それぞれの国情を反映する通貨・金融政策がない
ばかりか、財政政策も事実上ないことを意味する。つまり、
経済政策がない故の経済危機、高失業率だと言えるのだ」

「こういった事実を鑑みれば、『景気減速、失業、給与下落、資産価値減少、
格下げ』などを持ち出されて、EU離脱は英国自身のためにならないと、
ほぼ全世界から脅されても、自国の政治、政策の独立を守りたい人がいて
不思議ではない。約半数がそう判断できる英国人は極めて健全だと言える」


2:欧州の統合はもはや現実的ではない

「欧州連合は、将来的に1つの国に統合することを目的として設立された。
当初の鉄鋼、石炭生産の統合から始まり、
シェンゲン協定による国境検査なしの自由な往来、
ユーロによる通貨・金融政策の統一と発展してきた。

そして、残るは財政と社会保障費などの統一となった。
そのための財政赤字幅がGDP比3%以内という規制なのだ。

ところが、サブプライムショック、リーマンショックに起因する
PIIGS危機以降、強硬に反対する国が出てきた。
言うまでもなく、ドイツだ。それは財政収支のグラフを見せれば、
すべての人を納得させられる。失業率のグラフでもいい。
過去は過去、今となっては、ドイツに統合のメリットはない」


3:移民、難民問題

「移民・難民問題は、英国の問題というより、欧州大陸の問題で、
英国は巻き込まれたくないというのが率直なところだ。
一般的に解説されている様に、英国人にとって移民が職を奪うというのが
大問題なのなら、『景気減速、失業、給与下落、資産価値減少』
などという脅しに屈していたはずだ」

「欧州大陸では難民の急増や相次ぐテロ以降、シェンゲン協定が形骸化し、
移動の自由も脅かされている。つまり、欧州統合はどこから見ても、
現実的ではなくなった。英国人は痛みを承知で、損切りしたのだ」


上記のコラムで触れた頃、ブレグジット投票前後の英国は、
EUの重要なメンバーだった。ユーロ圏ではないので、
ECBの通貨・金融政策に対する発言力はなかったが、
他の部分では、少なくともコア構成国のフランス並みの発言力があった。
それが離脱を決めてからは、裏切り者、よそ者扱いだ。

例えれば、EU社の役員であった英が独立を宣言したが、
契約等の問題ですんなりとは退社を認められず、2年9カ月後でも
まだ籍があり、出社もしているようなものだ。
英にはもはや何の権限もないようなものなのだが、
出社の義務だけ課せられているので、
英をサポートしようとしていた所も、サポートの仕様がなく離れてきている。

一方で、英の独立宣言は、EU社内の改革派の火をつけた形となり、
他の役員や従業員の忠誠心が下がってしまった。
フランス政府は、先頃IT企業への課税を巡って、EU政府の指示から逸脱。
また、イタリア政府は財政案で、
EU政府に赤字枠の拡大をわずかながらも認めさせた。



・離脱期間延長が最悪のシナリオ

延長の意味は、英国はEUに籍を置き続けるという意味だ。
EUの法律に従う義務があり、自身の独断では何も決められない。
この主権国家の「独断」を、ナショナリズムの台頭と非難する知識人は多い
が、封建的な家族制度、教育制度で育ってきた知識人たちなのだろうか? 

EUでは「上級組織の命令には、どんなことでも従うべき」という軍隊、
あるいは、社会主義国家の「規律」が優先されている。
ところが、親であるEU政府が子である構成国政府に行ってきたことは、
私の目から見れば「虐待」だ。PIIGSに行ってきたこと、
仲間だったブレグジットを決めた英国に行っていることに、
私は「愛の欠片」も見いだせない。そんなことは、
2007年位からユーロ圏で起きてきたことを振り返れば、
「メガネが曇っていない限り」誰にでも分かることだ。

英国が宙ぶらりんでいる限り、英国を信じていた国や企業も離れて行く。
EUでもなく、EUから離れることもできない
英国のどこをサポートできるというのか?

部外者の私見とすれば、北アイルランドとアイルランド共和国の国境
などという困難な大問題があるにせよ、
英国は期日通りに「合意なき離脱」をした方がいい。
そして、できれば4月中にすべての国と貿易協定を結び直すことだ。

その方針さえ決めていれば、後はその準備だけだ。備蓄を積み上げ、
迅速に協定が結べるように、できるだけ多くの国々と予備会談を持つことだ。
2年9カ月もあったので、それぐらいのことは既に行っているとは思うのだが。



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