ケニー・奥谷
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「ニューヨーカーたち」 by ケニー・奥谷

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「ニューヨーカーたち」 by ケニー・奥谷

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オフィスに戻ると、同僚が泣きじゃくっていた。「どうした?」「今朝レイオフになったわ。今日の5時で皆とお別れよ」私がプラザホテルに赴任した1994年から最初の2年間はレイオフの嵐が吹き荒れた時代。プラザホテルを溺愛したオーナー、ドナルド・トランプ氏も破産の危機に直面。最良のオーナーを失いかけた世界最高峰のホテルは競売へと傾いていく。恐怖に怯える私にできることは、ニューヨーカーたちの働きぶりを一心にまねることだけだった。ここに私が学んだニューヨーカーたちの生き方、考え方、そして人生観について述べてみたい。

著者プロフィール

ケニー・奥谷

奥谷啓介、NY在住。慶応義塾大学卒業後、ウエスティンホテルズ・アジア地区セールスオフィスに入社。1989年からシンガポールのウエスティン、1991年からサイパンのハイアット、そして1994年から2005年まで世界屈指の名門ホテル、NYのプラザホテルにてアジア地区営業部長を務めた。2001年EB1(Person of Extraordinary Ability)カテゴリーに認定され米国永住権を取得。2005年プラザホテルの閉館に伴いホテル勤務に終止符を打ち、NYを拠点に執筆&講演&コンサルタント活動を開始。日米企業にクライアントを持ち、サービス・売り上げ・利益向上の指導からPR&マーケティングまでのマルチワークをこなす。著書:「世界最高のホテル・プラザでの10年間」、「海外旅行が変わるホテルの常識」、「サービス発展途上国日本」、「なぜお客様は神様では一流と呼ばれないのか」、「超一流の働き方」

サンプル号
「ニューヨーカーたち」Vol. 001

2/5/2017

____________________

"自分の適性を見つけて磨きをかけろ。それが熾烈な競争社会で生き抜く最良の方法である"
(1) ニューヨーカーたちの生き方 「自分の適正を見つけろ」
(2) ニューヨーカーたちの考え方 「残業はありえない」
(3) ニューヨークの支配者たち  「ジューイッシュ・ニューヨーカー」
(4) ニューヨークホテル物語  「不動産王トランプ氏とプラザホテル」
(5) J・ニューヨーカーの独り言  「この謙虚さにしてこの人気あり!」
(6) Q&A

____________________


(1)ニューヨーカーたちの生き方 「自分の適性を見つけろ」

【トップダウン制が生み出す高い生産性】
野望を抱いた人々が世界中から集結する街ニューヨーク。世界屈指の高い生産性をあげるアメ
リカの企業が彼らに課すものは尋常ではないノルマ。ホテルビジネスを見れば、日本のホテル
が3780円儲けるところ、アメリカのホテルは1万円を儲ける。こうした高い生産性を可能にし
ているものは少数精鋭のトップダウン制だ。そこで働くマネージャーが求められるものは常人
の幾倍、幾十倍もの生産性能力。優れた頭脳を持つ者だけがこのハードルを越えてトップエグ
ゼクティブへの階段を上がっていく。

【ベストコンディションを維持するための努力】
一人で幾人~幾十人もの働きをするためには、優れたアイデアを生み出しシステム化するしか
方法がない。優れたアイデアを生むためは、常に心身ともにベストコンデイションを維持し、
冴えある頭脳を保つことが不可欠と彼らは考える。そのために、一日8時間の睡眠をとり、週
に3回20分以上の運動を行い、年に2回のバケーションを取って精神を休める。傍から見たら、
短時間労働+長期バケーションを取る彼らの生活が優雅でうらやましく映るかもしれない。
だが、その裏には、“高い生産性をあげるため”という究極の目的が隠れている。だから、彼
らは仕事帰りに飲みにいかないし、夜の接待は控えることが常識となっている。

【真の平等】
「トップエグゼクティブになったら、アーリーリタイヤメントをして本当の自由を楽しみたい
んだ」と多くのエリートニューヨーカーたちは言う。その夢を可能にしているものは高い報酬
だ。常人の10倍の働きをする者は10倍の給与をもらうことが平等と彼らは考える。10倍の給
与を得られれば、40代にして余生を遊んで過ごせるだけの貯金が可能となる。

【不公平を許さない組織】
日本人から「10倍もの仕事をしていることをどのように計るのか?」という質問があがる。ア
メリカの組織では、各自がどれだけの能力をもっているかを明確に計れるシステムを作りあげ
ている。それがなければ、能力のない者が高給をとったり、能力のある者と無い者の上下関係
が反対になってしまったりと、不平等が生まれることになる。それは生産性を下げるだけでな
く、優秀な人材の退社へとつながり、企業を窮地へと追い込むことになる。

【競争社会に即した教育方針】
こうした熾烈な競争社会で成功するには、生まれつき備わった才能を極めることが得策だ。そ
れゆえ、親も学校の先生も、その子の得意分野を見つけて伸ばす教育を行う。大学は職業訓練
所の役割を果たす場となり、生徒は会社で働けるだけの力を身につけて卒業する。優秀な学校
を優秀な成績で卒業した生徒は、就職したときからマネージャーのポジションに就き、ベテラ
ンマネージャーと肩を並べ、同等の給与をとることさえ可能となる。この人材育成を大学が行
うという制度は、企業による新人研修を省き、アメリカ企業が高い生産性を生み出す大きな要
素のひとつになっている。

【優れた頭脳だけが実力ではない】
もちろん、エリートサラリーマンになることだけがニューヨーカーが目指す道ではない。生ま
れもった頭の良し悪しは仕方のないこと。試験で点数が取れない子は他の面で優れた素質を見
つければ良い。素直で笑顔が素敵な子は接客業で職歴を開花させられる大きな素質をもってい
る。ニューヨークの一流レストランのウエイター&ウエイトレスならば、15万ドル程度の年収
は得られる。アメリカ経済を根底から支えているチップ制度がそれを可能にしているのだ。一
人平均200ドルを支払うレストランならば、ウエイター&ウエイトレスが受け取るチップは約
40ドル。一晩に15人を担当すれば600ドルとなり、一月に約1万2千ドルを稼ぐ計算になる。腕
のいいヘアデザイナーの中には、一人頭200ドルを取り、一日に5人をこなして年収20万ドル以
上を稼ぐ者もいる。顧客から「明日からマイアミに行くので一緒に来てくれない?日当1000ド
ルと飛行機代を払うから」などという依頼も入る。自分が持つ才能を早くに見つけられた者た
ちは、ビジネスで成功を収める可能性がそれだけ高くなる。

【誰でもニューヨーカーになれる】
ニューヨークは世界各国から強い欲望を持った人々が集まる街。国籍と経歴を異にする人々が
競い合い、人種、性別、年齢、外観など、いかなる差別をも排除する社会を作りあげてきた。
今、差別意識を持つ者には厳しい罰を課す体制が敷かれている。この差別フリー環境が、才能
さえあれば誰でも大きな富を築くことを可能にしているのだ。そして、才能あるものに、アメ
リカ政府は永住権を与える。昨日、ニューヨークへ移住してきた日本人でも、この街が欲して
いる才能を持っていれば、優雅な生活を楽しむエリートニューヨーカーたちの仲間入りを果た
せるかもしれない。ニューヨーカーの定義は“ニューヨークに暮らす人々”。それだけなのだ
から。 
つづく。


(2)ニューヨーカーたちの考え方 「残業はありえない」

【残業を防ぐために必要なこと】
「会社の電気を10時に消すことで、残業を防ぐ」という記事を見た。上司が残っているから、
あるいは、仲間が残っているから帰れないという“付き合い残業”は別として、本当に仕事が
終らなくて残業をしている人は、電気が消されれば、場所を代えて続きを行わなければならな
い。移動する時間が無駄とになり、さらに状況を悪化させることになる。過労死や長時間残業
による自殺の悲劇を防ぐ根本的解決方法は、効率化を図り、短時間で多くの仕事ができるシス
テムをつくる以外にない。

【残業を許さない理由】
アメリカの企業では、先行き不透明な予算を設定することはできない。それを作れば、利益目
標が立たなくなってしまう。その代表とも言える“残業経費”は排除されなければならない。
また、長時間労働は人の能力を低下させるという事実もある。能力が低下したままでの労働は
生産性の低下となるから、これも許されない。これらが残業をさせない主な理由だ。では、ど
のようにしたら残業を排除した労働環境をつくれるのか?私が働いたニューヨークのプラザホ
テルの例を紹介したい。

【残業代を受け取る人がいない組織】
私が働いた組織の中には、残業を行う平社員がほとんどいなかった。組織は、管理職であるマ
ネージャー、シフトで働くスタッフ、そしてマネージャーの秘書で構成されている。マネージ
ャーは管理職なので、時間外労働をしても残業代は払われない。シフトで働くスタッフに時間
外労働はない。秘書だけは残業ができる。だが、仕事量をマネージャーが操作しているから、
やはり残業をすることはない。だが、ここで「マネージャーは管理職だから残業代が支払われ
ないのであって、実際は残業をしているのではないか?」という質問があがるだろう。

【能力を計るシステム】
アメリカ企業では、マネージャーがどれだけの能力をもっているかを明確に計れなくてはなら
ない。高い生産性を究極の目的とする企業は、能力の無いスタッフを雇っておくことはできな
いからだ。その手段として、仕事を分けて与える“分業制”を採用している。これにより、マ
ネージャーは自分に割り当てられた仕事だけを行い、他の人と力をあわせて動くことはない。
力をあわせれば、誰の能力がその結果にどれだけ反映しているかが不明となる。また、意見を
あわせることが必要となり、話し合いという時間のロスが生まれる。時間のロスは人件費の無
駄となり生産性を下げる働きをするから、一人で決断させて結果をださせる。そして、優れた
結果を出すマネージャーには、さらなる仕事を与えて昇進させていく。

【独立した労働環境】
彼らは自分に与えられた個室で働くか、パティションで区切られた中で働く。各自自分の電話
番号をもっているので、電話はすべて自分でとる。通話中にかかってきた電話は、留守番電話
にメッセージを残してもらい、後からかけなおす。秘書に電話を取ってもらうときがあるとす
れば、通話中か外出中で、相手が急いでいるときに限る。この環境では、勤務時間が過ぎれば、
誰がオフィスに残っているのかわからず、他のスタッフの顔を見ることなく、人々は帰途につ
く。仕事は自分のペースで行うから、労働時間を自分で調整できる。これでも、遅くまで残っ
て仕事をするマネージャーはいる。だが、大概、彼らは与えられたゴールに到達できない。長
時間労働では大きなノルマはこなせないからだ。優れたアイデアとそれを実行する力のみがノ
ルマ超えを可能にするのだ。

【自分に合った仕事を選ぶ幸せ】
レイオフで人を切る冷酷な体制と思われるかもしれないが、「能力にあわせた仕事を行うこと
が幸せ」という考え方もある。企業エリートにはなれなくても、自分にあった仕事につくこと
で幸せな生活をしている者はたくさんいる。レイオフになった私の同僚にペットが好きで、ペ
ットを預かる仕事を始めた者がいる。1時間の散歩をするのに25ドルで受ける。多い日は30匹
以上の世話をする。マンハッタンには約40万匹の飼い犬が登録されているから、仕事は時間と
ともに拡大していく。この仕事を始めたことで、彼女はホテルで働くよりも多くの収入を得て
充実した日々を過ごしている。ニューヨーカーにとって、仕事は人生を充実させるための手段。
お金を稼ぐための時間であってはならない。大切なのは自分の適性を見つけて、それを職に活
かすことなのだ。
つづく。

(3)ニューヨークの支配者たち「ジューイッシュ・ニューヨーカー」

【苦悩するレストランオーナー】
「ニューヨークでお店を出したいんです」という依頼をよく受ける。私の返答は「ここ3年で
家賃が急騰したので、普通の飲食ビジネスは難しいのです」となる。昨今、マンハッタンを歩
けば、いたるところで「ストアーフォーレント(テナント募集)」の看板を見る。日本人は
「景気が悪いんですね」という。だが、実はそうではない。

【家賃が2倍にも跳ね上がるシステム】
10年程度の長期契約となる商業施設の家賃は「毎年の家賃の値上げ率を3%とする」などとい
うもの。だが、期間が終わり、新たに契約を更新するときは、それまでの家賃は全く考慮され
ず、新しい相場値がでてくる。一月3000ドルで借りたスペースが毎年3%の値上がりをしても、
10年目の家賃は3914ドルにしかならない。しかし、マンハッタンでは、10年前に3000ドルだっ
た家賃が6000ドル以上になっているところがざらにある。そうした場所では、更新をするとき
に、6000ドルから始まることになる。3914ドルが6000ドルになってしまっては、採算が成り立
たたず、出ていくしかなくなってしまうのだ。

【ユダヤ人の掟】
「ならば家賃が下がるのを待つしかないですね」と言われて、私の返答は「残念ながら家賃は
ほどんど下がらないのです」となる。通常、空き部屋が沢山でれば、家賃が下がるのが市場の
原理。だが、マンハッタンに限ってはあまり下がらない。いや下げない。下げれば、値引き合
戦が始まり全体の家賃が下がりだす。それはオーナー同士が首を絞めあう事態を引き起こすの
で、彼らの多くは空いたままで1年でも2年でも我慢する。ニューヨークの不動産で大きな力を
持っているのはジューイッシュ(ユダヤ人)。これは“ユダヤ商法”と言われるように、彼ら
自身の“掟”なのだろう。

【ユダヤ人の創造物】
マンハッタンで見かけるショップにはユダヤ人が造った物が多くある。ブランドではラルフロ
ーレン、ケネスコール、カルバンクライン、マイケルコー、ギャップ、コーチ、エスティーロ
ーダなど。食品では、スターバックス、ダンキンドーナツ、ハーゲンダッツ、バスキン―ロビ
ンソンなど。また、スーパーマーケットで販売されている食品の約6割はKOSHERマーク(ユダ
ヤ人の宗教上の決まりをパスしたユダヤ人が食べられる品)が付いている。その他、フェイス
ブックもグーグルもDellも彼らによって造られた。また、創始者でなくても、彼らはアメリカ
の多くの大企業の大株主としてのポジションを保っている。

【ニューヨークはジューヨーク】
ニューヨーク市の人口は約850万人。そのうちの13%にあたる約110万人がユダヤ人で占められ
ている。彼らの祖国イスラエルの首都テルアビブの320万人に継ぐユダヤ人集中居住地となり、
彼らのあまりの強さに、「ニューヨークはジューヨークと呼ばれる」ほどだ。アメリカのホテ
ルビジネス、殊にニューヨークのホテルビジネスはユダヤ人の動きによって大きく左右される。
つづく。


(4)ニューヨークホテル物語  「不動産王トランプ氏とプラザホテル」

【プラザホテルに恋したトランプ氏】
「7歳の時だったと思う。両親と一緒にプラザホテルに来て、パームコートでランチを食べた
んだ。それ以来、プラザのことは忘れられなかった。大学を出てから買いたい物件リストがあ
った。プラザはいつもナンバーワンだった」これはドナルド・トランプ氏がプラザホテルのオ
ーナーだった1993年に語ったこと。後に「ザ・プラザ」を出版することになるウオード・モア
ハウス氏のインタビューに応えたときのものだ。

マンハッタンの中央を縦に走る目抜き通りがフィフスアベニュー。そのアベニューはセントラ
ルパークの最南端59ストリートを境に、北方向はミュージアムがひしめきあうミュージアムマ
イルに、南方向は世界の一流ブランドが乱立するブランド街へと姿を変える。その真ん中に立
つフレンチルネッサンスシャトースタイルのホテル、ザ・プラザ(プラザホテルの正式名称)。
これほどニューヨークを代表する豪華ホテルは他には無い言っても過言ではない。トランプ氏
が、たとえ破産を経験することになろうとも、手に入れたかったのは無理もなかった。

1975年ウエスタン・インターナショナル・ホテルズ(後のウエスティン・ホテルズ)がプラ
ザホテルを25ミリオンダラーで購入。その1年後トランプ氏は当時の総支配人フィリップ・
フューズ氏にプラザホテルを購入したいと話をもちかける。「いくらまで出せるんですか?」
というフューズ氏の問いに「50ミリオンダラーまでならだします」と言ったという。昨年
払った額の2倍のオファーを無碍にはできず、フューズ氏はシアトルの本社に電話を入れた。
だが、ウエスタン・インターナショナル・ホテルズにフラッグシップのプラザホテルを手放
す意思はなかった。トランプ氏は聞いたという。「一体いくらなら売ってくれるんですか?」
「100ミリオンダラーなら」というフューズ氏の応えは“売るつもりはない”という意思表示
に等しかった。

次にトランプ氏にチャンスが訪れたのは、ウエスティン・ホテルズが青木建設に買収された
1988年のこと。奇しくもその機会を作りあげたものは、1985年9月22日にプラザホテルで締結
された“プラザ合意”だった。日本経済は「プラザ合意」で引き起こされたバブル経済の真っ
ただ中。「プラザ合意」を決めたG5の日本代表として参席した当時の大蔵大臣は竹下昇氏。そ
の元秘書だった青木宏悦氏率いる青木建設建設が約1730億円でウエステインホテルズを買収す
る。その際に、2つのホテルを売るという条件が含まれていた。プラザホテルは415ミリオンダ
ラーでトランプ氏に、そして、ロックフェラーが造った超豪華リゾート、マウナケアビーチホ
テルは315ミリオンダラーで西武鉄道に売られていった。

1975年に25ミリオンダラーだったホテルを13年後の1988年に415ミリオンダラーの値段で買う
には相当の無理があったに違いない。50ミリオンダラーまでしか出せなかったトランプ氏が、
わずか13年間でいかに巨大な力を持つに至ったかを象徴する数字とも言える。だが、その
“つけ”が、後年回ってくることになるとはトランプ氏も予想がつかなかったのだろう。
つづく。



(5)J・ニューヨーカーの独り言 「この謙虚さにしてこの人気あり!」

フィフスアベニューの82ストリートから105ストリートまでの約1マイルは“ミュージアム
マイル”と呼ばれている。メトロポリタンミュージアム、グッゲンハイムミュージアム、
ジューイッシュミュージアムなど10軒ほどのミュージアムがあるからだ。

私はときどき、そこにある“ノイエギャラリー”に行く。絵を見に行くのではなく、その館
に入っている“カフェ・サバスキー”というカフェにケーキを食べに行くのだ。どのケーキ
も美味しいが、私の一番のお気に入りは定番のザッハトルテ。添えられている生クリームと
トルテのチョコレート味が口の中でとろける美味しさが忘れられなくて通っている。もちろ
んすんなりとは入れず、並んで待つことが多い。

スイートのお店でも、日によって味が違っていたり、「昔はおいしかったのに残念」と言い
たくなったりするところは結構ある。それがアメリカなのだから仕方がない。ただ、ここの
素晴らしい味は、店の責任者が代わらない限り保てるに違いない。

その理由は、お金を払うときについてくる一枚の紙にある。「お店の情報をお届けしたいと
思います。よろしければ、名刺を残していただくか、ここにEメールアドレスをご記入くだ
さい。また、コメントがありましたら、お聞かせください」と書いてある。

この謙虚さに感心する。私はどこで登録したか思い出せない企業から送られてくるEメール
には目を通さずに消去する。アメリカ社会での調査も、EメールDM(ダイレクトメール)へ
の反応率は0.1%とあるから、多くの人は私と同じだろう。だが、自ら求めたDMならば目を
通す。また、この“コメントがありましたら、お聞かせください”というところが大切だ。
真のコメントを利用者からとるのは至難だ。今時は、“コメントをお願いします”などとE
メールでサーベイを流そうものなら「面倒なことを言ってきやがって、人の時間をなんだと
思っているんだ!」と反発を買う。一時期、航空会社やレンタカー会社がこぞって送ってき
た“利用後のサーベイ”は廃れている。サーベイが反感を買い、利用客を逃すという逆効果
を生んでしまえば本末転倒だからだ。そんな結果になることは当然だと思うのだが、一時は
流行っていた。

だが、請求書の横にさりげなく置いてあるアンケートは別だ。気に入らないことがあったと
きは、そこに書くだろう。それこそ店が最も知りたいことなのだ。それでサービスの落ち度
を改善できる。これほど大切な情報はない。大人気にもかかわらず、それを行っているこの
店には脱帽だ。謙虚な姿勢を持った責任者がここで働いている限り、この店は安泰だろう。
つづく


(6)Q&A

ご質問は下記のEメールにて受け付けております。尚、全てのご質問にお応えできないこと
もありますのでご了承ください。
mag2.okutani@gmail.com



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メルマガの不達、課金等についてのお問い合わせは、
まぐまぐ!お問い合わせ窓口
reader_yuryo@mag2.com
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毎月 5日・15日・25日予定 今月2/3回(最終 2019/03/15)
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