週刊！編集者・佐渡島の『好きのおすそ分け』

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週刊！編集者・佐渡島の『好きのおすそ分け』
（2019/5/22号）
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●今週の気づき：
シンプルなものだけが生き残っている

「It’s a piece of cake！」

『宇宙兄弟』に登場する僕の好きなセリフだ。直訳すれば「ケーキひと切れ分」だが、「余裕だよ。楽勝だ！」という慣用句だ。

この言葉は、自分の心を落ち着けるための、おまじないのようなものだと思っていたが、ちょっと違う見方をする考え方に出会った。

今、新人マンガ家を育成するマンガ専科という講座を6ヶ月間運営している。そこで、イラストの回を担当してくるデザイナーと教材を詰めていた時のことだ。

「絵を描くなんて、簡単なことなんですよ。世の中に残っているものは、すべて簡単なもの。簡単で、たくさんの人が取り組めないと、そもそもその技術は、残らないのだから」

僕は、家で料理をする。レシピをみて、なんでも作る。でも、寿司は絶対に寿司屋にいく。家で自分ではつくらない。難しいと思っているからだ。

でも、彼は言う。「チェーン店とか、スーパーの裏では、バイトの人が握ってるでしょ。やればできるようになるのに、難しいって言ってやり始めない人がほとんどなんだよ」

実際、彼はそう言って、1年近く自分で寿司を学び始め、握れるようになってしまった。
そのまま、びっくりすることに、都内で五本の指に入るくらいの美味しい寿司を握れるようになった。寿司の修行は、数十年という話は、どこへいってしまったのか？
楽勝だと思って、なんでもやり始めることで、彼は、コーヒー、写真、なんでもプロ級だ。もちろんデザインも。寿司は、噂を聞きつけた美食家が、世界中から来るようになっているくらいだ。

彼は、学びのプロだ。天才なのではない。学び方が圧倒的にうまい。その基本にある思想が、「シンプルなものしか世の中には生き残らない。だから苦手意識を持たずにやり始めた方がいい」だ。

挑戦をしても、ほとんどの人が出来ないほど困難なものであれば、そのジャンルは滅びてしまう。長期的な存在は、それ自体が簡単であることの証明になっているのだ。
寿司を握るのが困難を極めるものであれば、寿司屋はとうに世の中から消えている。世界中で日本人以外が握る寿司屋があるなんてことも起きない。

苦手と思うことは、たいてい挑戦をしていないか、1、2回やってみただけで無理だと思っている。

全てのものごとは簡単と捉え、苦手意識を失くし、10回やってみる。そうすると、苦手なものがなくなっていく。

苦手意識とは先入観なのだ。

『ドラゴン桜』の桜木のVチューバーを通じて伝えているのも、勉強とは本来、楽しいものだということだ。
苦手意識のせいで、自然と勉強が楽しくない理由探しに意識がいってしまう。苦手意識に囚われ、本来楽しめたであろうものを味わうことができず、もったいない時間を過ごしている人が多すぎる。

宇宙兄弟で、ムッタやシャロンが「It’s a piece of cake！」を合言葉にしているが、この言葉の意味を、改めてとらえ直した。

「経営って難しい」そんな言葉を、僕もポロっと言ってしまう。でも、世の中に経営者はごまんといる。
僕が本当に成功を手にしたいなら、「経営なんて簡単で、楽勝でできる！」という姿勢を身につけなくてはいけないのだ。

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公開日記(4月23日〜5月4日)
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僕が普段どんなことをしているのかを、極力公開していきます。

《 4月23日 》
gumiの国光さんとアクティブエイトの大坂さんとランチ。
どういう風にVチューバーの桜木を伸ばしていくのかや、Vチューバーやブロックチェーンによって起きる社会変化について話した。

午後は三田さんとドラゴン桜の打ち合わせ。

夜はひろゆきさんと会食。場所は恵比寿の『めぐたま』。
ひろゆきさんの著書『無敵の思考』に、「僕に会いたいという人は、僕が時間通りに来ることを期待していないから、時間通りに行かなくて良いと思っている」と書いてあったのだけど、本当にひろゆきさんが遅刻してきて面白かった。

《 4月24日 》
朝は2025年に開催される大阪万博に関するヒアリングを経済産業省から受ける。

午後は、Vチューバー桜木の収録。ソーシャルゲームのシナリオをつくる仕事のMTG。
夜はコルクラボ。この半年くらいでコルクラボがどう変わったのかを、ラボの運営を中心でやってくれているスナイパーと対談形式で話す。

《 4月25日 》
中国でドラゴン桜の舞台化の提案が来て、その打ち合わせ。

その後、GoogleのVRのスタジオで、平野啓一郎さんと一緒にGoogle earthやVRチャットルームを体験させてもらう。「VRによって、人生はリセットできるようになるのではないか」と先日の記事にも書いたが、本当にそうなるだろうと改めて実感した。

その後は、マンバの定例会議をやって、good design companyと宇宙兄弟のブランディングのMTG。夜は社会人2年目から続いている焼肉の会を実施。川村元気とか、編集者の柿内とかと一緒に焼肉を食べる会。この日は『焼肉しみず』に行った。だいたい半年に一回くらいのペースでやっている。

《 4月26日 》
朝はネームタンクの後藤さんとコルクラボマンガ専科のための打ち合わせ。それから、ソネットとコルクブックスの取締役会に出席。

夜はコルクラボの編集部MTG。この編集部MTGが自分の編集に対する思考を深めるのに良い場になっている。みんなで編集についてディスカッションをするのだけど、参加者のほとんどは編集については未経験。
だからこそ、新鮮な質問が僕に飛んできて、考えるキッカケを与えてくれる。

この日は、コンテキストをつくるとはどういうことなのかを話し合った。ステークホルダーがどんどん増えていくとコンテンツはヒットする。
そして、コンテキストとは「他人をステークホルダーにすること」という定義が生まれて、思考が進んだ。これは、今度記事にして説明したい。

《 4月27日 》
経営者仲間の友達とゴルフ。キングフィールズゴルフクラブで47、47の94。

《 4月28日 》
この日はコルクラボマンガ専科でズーニーさんのワークショップ。「大切な人にメッセージを書く」というお題で、僕はマンガ家たちへのメッセージを書いた。

《 4月29日 》
家族で一日過す。関西から両親が孫たちに会いにくる。

《 4月30日 》
家族は先に千葉にいき、僕だけ都内に残って仕事を片付ける。打ち合わせも多く、新人マンガ家、コルクの海外事業を手伝ってくれている人、そして宇宙兄弟の小山さん。
普通に仕事をしていた。夜は両親と3人で、『珀狼』という広尾にあるイタリア料理のレストランに夕食にいく。久しぶりに両親と話をして楽しかったのだけど、ふたりが年老いていることを深く感じた。

《 5月1日〜2日 》
千葉の館山にいる妻の両親の家に泊まりにいく。妻の両親はリタイアを機に館山に移り住み、海沿いに新居を建てたのだけど、そこには海を見ながら入れる風呂場がある。夕日が海に沈むのを見ながらお風呂に入るという贅沢を味わうことができ、この風呂場が僕は大好きだ。

《 5月3日〜4日 》
Yahooの川邊さんの自宅で、150人近くで「こどもの日」を祝うキャンプに子供たちと一緒に参加する。海と自然の中で子供たちを遊ばせつつ、バーベキューとキャンプファイヤーが最高に楽しかった。

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■見た映画/ドラマ・購入書籍の共有
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僕が見た映画や購入した書籍を紹介していきます。

《 映画/ドラマ 》
●女神の見えざる手
ロビー活動をするアメリカの女性の話なのだけど、主人公の女性が本当に魅力的。久しぶりに大好きなキャラクターと出会えた。信念のためであれば、誰からも理解されなくても、その道を突き進むという姿勢にすごく共感する。
そして、物語の最後の展開が素晴らしくて、画面に釘付けになった。NetflexやAmazon Primeのコンテンツで最後のエンドロールをじっくりと見ようと思わないのだけれど、この映画はそこまで観て、余韻に浸ることができた。僕は習慣として色々な映画を観るようにしているが、久しぶりに素晴らしい作品とめぐり逢えたと思った。
監督のジョン・マッデンについて調べてみたら、僕の大好きな映画である『恋におちたシェイクスピア』の監督もしていて、彼の作品を全て見直したいと思っている。

●流転の地球
中国で製作されている宇宙開発に関する映画。物語はそこまで面白いものではないが、中国の絵づくりのクオリティが凄まじく高まってきていることを感じた。

●サルベーション シーズン１
もともと妻がハマって見ていて、その影響で観始めた。僕もハマってシーズン１をもうすぐで見終えるというところで、妻からシーズン２は観るに値しないと全てのあらすじのネタバレを受けた。
ただ、確かに観るに値しない内容だなと思った。Netflixはネタに困ると宇宙人が襲撃してくる話になってしまうのが非常によくない。ここは改善して欲しいと思った。

《 購入した書籍 》
●マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する
まだ前半しか読んでいないけど、面白い。

●ROUTE END
これは８巻まで出ているのだけれど、面白くて読むのが止まらなかった。平野さんの『空白を満たしなさい』も自殺について考える物語だったけど、ROUTE ENDも自殺がどれだけ遺族に影響を与えるのかを考えさせる物語で、すごく良いマンガだと思った。

●リメインバッド

●自己矛盾
すごく面白いと思う一冊。とても勉強になった感じた。自己矛盾に気づけるようになりたいと常に思っているので、それに気づける学びがたくさん詰まっていた。

●アナロジー思考
上の『自己矛盾』の著者の細谷さんが書いた本だが、こちらもすごく面白い。